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中国「美的」が独クカへ買収提案。日本のロボットメーカーへの影響は

中国市場でのシェア争い激しく。美的と提携関係にある安川電機はどう動く
中国「美的」が独クカへ買収提案。日本のロボットメーカーへの影響は

日系ロボット大手とシェアを争うドイツのクカ

 産業用ロボットで世界トップ級のシェアを誇るドイツのクカが、中国家電大手のミデア・グループ(美的集団)に買収される可能性が出てきた。美的集団はクカの企業価値を46億ユーロ(約5670億円)と評価し、1株115ユーロ(約1万4000円)の追加出資を提案した。持ち株比率を30%超に引き上げ、筆頭株主となることが狙いだ。ロボット需要が急拡大する中国で、美的とクカの巨大連合が誕生すれば、日系ロボット大手の事業戦略も大きな影響を受けそうだ。

 美的は現在13・5%の持ち株比率を引き上げることで、クカの経営権を握りたい考え。クカ側は美的の提案を「慎重に精査し結論を出す」としており、今後の出方が注目されている。美的は買収が成立した場合、クカのブランドや独立性は維持するという。

家電工場の省人化さらに推進


 美的は賃金高騰や労働力不足の対策として家電工場の省人化を推進しており、今回の買収計画もクカの技術で製造革新を加速させることが目的の一つとされる。現在、同社がグループ全体で抱える従業員数は約10万人。今後、ロボットの巨大ユーザーになることは間違いない。

 仮に美的がクカ製ロボットを大々的に採用することになれば、急拡大している中国ロボット市場の勢力図が、一変する可能性もある。また、美的が中国全土に持つ強力な販売網も、クカにとって大きな追い風になるかもしれない。

 このため、クカと激しいシェア争いを繰り広げる日系ロボット大手にとって、美的による買収は好ましからざる話だろう。中でも今後の動きが注目されるのが、安川電機だ。

事業戦略の転換の迫られる可能性も


 同社は2015年にロボット事業に関して美的と提携。美的のエアコン工場で先端的な自動化ラインを共同開発し、それを美的のグループ全体に横展開する方向で動いていた。今のところ安川電機は今回の買収計画に関して明確な見解を示していないが、ライバルのクカが美的と組んだ場合、中国での事業戦略に大きな変更を迫られる可能性がある。

 中国では14年にロボットの国内販売台数が5万7000台に達し(中国ロボット産業連盟調べ)、世界最大の需要地になりつつある。

 日系ロボット大手にとっては、近年販売が最も伸びている重要市場。市場の成長に合わせて競争も激化しているだけに、美的、そしてクカが今後どう動くかを、業界各社は注視している。
(文=藤崎竜介)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
クカ買収の成否に関わらず汎用的なロボットの徐々に中国メーカーが浸食していくだろう。キーデバイスの技術をどこまで死守できるかが一つのポイント。日本メーカーは慎重に進めてきた中国工場の拡充のスピードを早める必要があるかもしれない。ドイツは第4次産業革命「インダストリー4.0」を国家的に進めているが、ロボット産業はその中核を成す。簡単に手放すとは考えにくいが、世界にドイツの標準システムを展開することを目指しており、中国との戦略的な協業は十分に考えられる。

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