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「日本版DSB」は誕生するか。防衛装備の産業組織化を自民党部会が提言

防衛産業の業界再編につながる可能性も
「日本版DSB」は誕生するか。防衛装備の産業組織化を自民党部会が提言

初飛行に成功した先進技術実証機「X―2」

 自民党・国防部会は17日、防衛装備・技術政策に関する提言案を取りまとめ、国際水準で効率的に装備品を開発・生産できる産業組織を検討し、業界に最適化を促すことなどを盛り込んだ。現状は「わが国の多くの防衛産業は民生品メーカーの小規模部門が防衛生産を担っている」とし、実現すれば防衛産業の業界再編につながる可能性もある。提言は防衛装備庁を中心に政府一体となって「可及的早期に実現することを求める」としている。

 提言では「技術的優越」の確保に取り組むことの重要性を訴え、「防衛装備・技術政策を抜本的に見直すべきだ」とし、三つの方向性を示した。

 具体的には政府内に科学技術や安全保障の専門知見を有する有識者会議「日本版DSB」を設立することのほか、装備品への活用を見込める基礎研究を大学などの研究機関に委託する「安全保障技術研究推進制度」の100億円規模への大幅拡充などを取り上げた。

 また、防衛技術戦略や防衛装備庁が重視する先進的技術分野を明らかにした「中長期技術見積もり」の速やかな策定などを盛り込んだ。装備品の開発に当たっては「将来国内外の民間市場で販売できる仕様にすること」など国際化への戦略的対応を提言した。

 ほかには防衛生産基盤のサプライチェーンの実情を把握し、事業縮小による撤退、海外からの買収などのリスクに対応するための施策を検討することや、優れた技術を持つ中小企業を発掘し、「海外との装備協力に積極的に参加できるよう環境を整備すること」などをあげた。
日刊工業新聞2016年5月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
三菱重工が防衛装備庁から設計・製造を受託したステルス戦闘機の実証機には約220社が参加している。政府は2014年に防衛装備移転三原則」を閣議決定し、条件付きで装備品輸出を認める方針へ転換した。ステルス機で各国との共同開発が実現すれば、売り先は防衛省だけから世界に広がる。1世界の防衛産業市場(14年実績)は約4000億ドル(中国除く)で10年前から5割ほど増えている。それに対し日本は1兆5000億円規模にとどまっている。さまざまな議論はあると思うが、自民党部会の提言は一考する価値はある。

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