IoT・AIの知財制度、日米欧中韓が共同整備へ

5大特許庁長官会合で課題を抽出。1カ国の解釈だけでは倫理観形成など難しく

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 日本、米国、欧州、中国、韓国の特許庁がIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新技術に対応した知的財産制度で歩調を合わせる見通しになった。6月初めに東京で開催される5大特許庁(IP5)長官会合で課題や対応の情報共有を提案。国・地域間の連携を決める見込み。AI活用による特許行政業務の高度化なども検討するとみられ、同会合を皮切りに第4次産業革命における特許制度の国際議論が本格化する。

 特許出願件数は日・米・欧・中・韓で世界の約8割を占める。5大特許庁会合は2007年から実施、審査結果の相互利用や審査品質の維持・向上で協力関係を深めてきた。

 今後、AI創作物の知的財産の取り扱いやフリーライドの防止、データを第三者と共有した際の対価確保など、さまざまな課題を解決する新たな特許制度の確立は欠かせない。5大特許庁が連携することで、近年急速に発展するIoTやAI、ロボットなどの新技術を適切に保護し、イノベーションの促進を後押しする。

 特許庁によるとAI技術の特許出願件数は米国籍による出願が半数弱を占める。ただビッグデータ分析技術については日本国籍が高いシェアを握る。AIの保護・活用など新技術をめぐる特許制度の共同歩調に向けて、6月の同会合は大きな意味を持っており、日本がリードできるかどうかの試金石にもなりそうだ。

 このほか同会合では、各庁システムを連携し5庁すべての審査経過情報をユーザーが一括参照できる「グローバル・ドシエ」の完成を確認する。さらに特許審査ハイウエー(PPH)や国際特許出願調査(PCT協働調査)の試行など連携深化で合意する見通しだ。

日刊工業新聞2016年5月17日

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

世界の8割の特許シェアを持つ5カ国がこれまでにも10年間様々な協議を重ねてきたであろう経緯はあれど、IoT・AI領域の知財について共同で整備することに踏み切る意義は大きい。それだけこの2つの技術領域が様々な産業に影響を与えるものであり、多国のバリューチェーンをまたぐ取り組みになることなどから共同で取り組まざるをえないという判断が働いたものであろう。特に、一つの国の解釈だけでは暴走抑止や倫理観形成などが難しい問題となりうるAIなどは相互評価の必要がある。各国が持つ技術や社会課題を踏まえて共通知財ルールの上でフェアな競争が行われる環境が早期実現することを期待したい。

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