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ホンダ、収益立て直しへ。エアバック問題はもう言い訳できない

17年3月期の営業利益は2割増見込む。4輪販売は3・6%増の491万5000万台
ホンダ、収益立て直しへ。エアバック問題はもう言い訳できない

3月に「クラリティ フューエルセル」を発表する八郷社長

 ホンダは2017年3月期連結業績(IFRS)の営業利益は、同19・2%増の6000億円となる見通しだ。タカタ製エアバッグの欠陥問題で膨らんでいた品質関連費用の引き当てが、16年3月期までに完了したためだ。

 売上高は、世界販売台数が増えるものの為替が影響することで、同5・8%減の13兆7500億円と予想した。16年3月期にこれまでリコール(回収・無償修理)対象外だった乾燥剤の入っていないガス発生剤を使ったエアバッグをすべて、額にして約4360億円の関連費用を引き当てた。タカタと米当局との合意に伴う措置。円高などの為替が3030億円の減益要因となるが、エアバッグ問題の減益要因がなくなるため増益に転じる。

 17年3月期の世界販売台数予想は4輪が同3・6%増の491万5000台、2輪が同7・7%増の1836万台。北米とアジアで増えるが減収の見込み。岩村哲夫副社長は「現地調達率の向上などを進め、為替への耐性を高める」とした。

 16年3月期連結業績は、売上高は4輪事業が好調に推移し、同9・6%増の14兆6011億円だった。営業利益は、品質関連費用と米ドル対他通貨の為替換算の影響で、同24・9%減の5033億円となった。

国内生産は6%増の81万台


2016年5月12日


 ホンダは2016年度の4輪車の国内生産台数を前年度比6%増の81万台前後とする計画を主要サプライヤーに通知した。前年度実績76万台からの増加分約5万台は、ほぼ輸出向けとなる。実現すれば3年ぶりの前年超えとなるが、依然として低水準が続く。

 ホンダは国内の生産余力を輸出に振り向ける方針をとっており、15年に欧米市場向け小型車「フィット」の生産を日本で始めた。16年度は輸出用のフィットが生産増に寄与するほか、北米市場向けセダン「アコード」のハイブリッド車(HV)の生産も米国から日本に移す。

 一方、国内向けでは16年度発売予定のミニバン「フリード」の全面改良モデルが生産を支える見通し。ただ市場環境は厳しく、国内向け全体の生産はほぼ横ばいと見込んでいるもよう。

 八郷隆弘社長は2月の会見で「3―4年かけて国内生産を90万台半ばにする」と表明。今後、欧州向けスポーツ多目的車(SUV)「HR―V(日本名ヴェゼル)」とSUV「CR―V」も新たに国内で生産する。さらに北米向けのCR―Vと主力車種である「シビック」の国内生産も検討している。

 ホンダの国内生産は統計が残る00年度以降、15年度が最低だった。目標とする90万台半ばへの回復に向け、16年度から反転攻勢をかける。
日刊工業新聞2016年5月16日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
ホンダがタカタエアバッグの呪縛からほぼ完全に脱してきている。NHTSAの修正コンセントオーダーに基づき、16/3期4Qに2,100万個の乾燥剤無し硝酸アンモニウムインフレーターのリコール費用を引き当て、これで過去の実施済み分と合計した、全量5,100万個を手当て済み。実に、費用は5,560億円に及ぶ。 乾燥剤付き硝酸アンモニウムインフレーターは2019年末まで決着が先送りされているが、ホンダの抱える同インフレーター個数は僅かに1,000万個と、問題規模は大幅に縮小する。もう、エアバッグを理由にはできない。出遅れた収益性の立て直しを早期に示すべき時に差し掛かった。

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