沖縄の物流ハブ機能、アジアに近く、速く、そして旨く!

ヤマト運輸が物流施設を拡大、JALグループは離島物流を強化

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琉球エアーコミューターが導入したカーゴ・コンビ
 沖縄で物流の機能を拡充する動きが加速している。ヤマトホールディングスは2015年11月、沖縄・那覇空港に隣接する国際物流拠点産業集積地域に沖縄グローバルロジスティクスセンター「サザンゲート」を開設。沖縄の地の利を生かし、保税倉庫に加え、保税工場などの設備をそろえた。日本航空(JAL)は離島路線を運航するグループ会社、琉球エアーコミューター(RAC、那覇市)で、貨物スペースを従来の2倍に広げた新機材「DHC8―Q400CC(カーゴ・コンビ)」を導入。離島の産業活性化を目指している。

リードタイム大幅短縮


 ヤマトHDのサザンゲートの中では、ガラス張りのクリーンルームで、白衣に身を包んだ作業員が黙々と流れてくる容器に充填作業を行っている。物流施設と言えば、天井まで続く棚に、荷物がうずたかく積まれているのが一般的。あまり見られない光景だ。

(ヤマトHDのサザンゲート内に設けたホシケミカルズの化粧品充填工場)

 このスペースは化粧品のOEM(相手先ブランド)製造を手がけるホシケミカルズ(東京都千代田区)の沖縄工場。ホシケミカルズは将来的に保税工場とすることを視野に入れ、サザンゲートの中に工場を設けた。海外から輸入してきた原料や容器を保税状態で加工し、保税スペースで充填、包装する。

(ヤマトHDの「サザンゲート」)

 さらに関税をかけずに輸出できる。サザンゲートは保税機能を生かし、メーカーの保守パーツなどをまとめて保管する「パーツセンター」を備えている。ここを利用する東芝の子会社、東芝自動機器システムサービスと、東芝インフラシステムソリューション社は、4000種類、15万点の保守部品を保管している。

 ヤマトHDはシンガポールにあるサテライト倉庫を連携させ、メーカーの総在庫量のマネジメントとスピード配送サービスを実現している。沖縄とシンガポールに保守部品を分散して保管し、必要に応じて順次出荷。那覇空港は24時間体制で通関が可能な沖縄貨物ハブがあり、全日本空輸(ANA)がシンガポール向けの貨物便を毎日運航しているため、総在庫量を増やさず、リードタイムを大幅に短縮できる。

 沖縄は日本の最西端に位置するが、東南アジアまで含めた、アジアのエリアでは中心になる。沖縄県はこの地の利を生かし、アジアの物流のハブとして機能させることを目指し、積極的に投資もしている。サザンゲートが入っている施設は、沖縄県が国際物流拠点産業集積地域那覇地区内に整備したもので、ヤマトHDは間借りしている格好だ。

離島生産者の商機広がる


 RACが4月15日に運航を始めたQ400CCはカナダ・ボンバルディアの機材で、RACが世界で初めて導入した。これまで離島の航空貨物はスペースが限られていたため、生産にも影響を及ぼしていたが、離島の生産者にとって、チャンスが大きく広がった。ボンバルディアのアンディ・ソレム副社長は「Q400CCに興味を持つ航空会社を沖縄に呼び、RACが実際に運航しているところをみせていきたい」と鼻息が荒い。

 RACの就航地の一つである与那国島はカジキマグロが特産品。従来の機材はカジキマグロを2本しか載せられなかったため、輸送は主にフェリーに頼っていた。だが、フェリーは週2便しか就航しないため、フェリーに合わせて漁に出ていたという。Q400CCはカジキマグロを最大8本載せるスペースがある。飛行機は毎日運航していることから、漁の制約がなくなる。

 RACの伊礼恭社長は「大東島のアワビや久米島のカキなど、付加価値の高い離島の海産物を航空機で市場へ出せる」と話す。同機のカタログ価格は1機35億円で、RACは国と沖縄県から全額補助を受けて購入した。RACは18年3月までに5機を受領し、順次置き換えを進める。導入の背景には、離島の経済活性化という沖縄県の戦略がある。

東南アへの輸出拠点、県内企業の販路拡大へ


 ヤマトHDは国際物流のハブとしての機能強化、JALは沖縄の離島の物流と経済の活性化と、目的は異なるものの、沖縄県は県の地理的条件や地域特性を生かして、物流のハブとなることを目指す。両社の機能が結びつけば、離島で生産した農水畜産物を、沖縄貨物ハブから東南アジアに輸出するということも夢ではない。

 沖縄県は16年3月、15年9月に策定したアジア経済戦略構想を実施計画に落とし込んだ「推進計画」をまとめた。16年度からは国際物流商業課を発展的に解消し、アジア経済戦略課を新設。構想実現に向けたスタートを切った。

 五つの重点戦略の1番目に掲げるのが「アジアをつなぐ、国際競争力ある物流拠点の形成」だ。ANAグループが那覇空港に置いた沖縄貨物ハブは、沖縄が抱えていた国内での地理的不利を、東アジアの中心とすることで強みに変えた。そしてビジネスの意識も海外へ向けることで経済発展を目指す。

 県は那覇空港の国際貨物取扱量を14年度の18万5000トンから、21年度に40万トンへ伸ばす目標を掲げる。また沖縄からの食料品・飲料輸出額を14年(暦年)の14億5000万円から21年度に22億円へ増やす。そのため那覇空港や那覇港の整備、臨空・臨港地域への物流センター建設などハード面を強化。航空コンテナのスペース確保などソフト面でも支援する。

 11月に第3回を開催する食品の国際商談会「沖縄大交易会」も、県や経済界が後押しする物流量増大に向けた取り組み。実行委員会の安里昌利副委員長(沖縄銀行会長)は「目的の一丁目一番地は県内企業の販路拡大」と力を込める。

 さらに沖縄県は離島の産業振興などを図る「住みよく魅力ある島づくり計画」も走らせる。離島が抱えるハードルは文字通り”距離“。ハブ拠点化で日本とアジアのリードタイムは縮まった。一方で「まず離島から(沖縄)本島までの輸送に時間がかかる」と離島の生産者はもらす。

 沖縄の経済発展は単に物流量の増加だけでなく、いかに沖縄の生産物を移出・輸出するかにかかる。その点でも離島も含めた産業振興に向けて、官民挙げての取り組みが進む。
(文=高屋優理、那覇・三苫能徳)

日刊工業新聞2016年5月10日 深層断面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

政府の一括交付金を使った県による大規模投資の効果で、沖縄の物流インフラは着実に充実しています。ただ、運ぶ“中身”の方はまだまだこれから。沖縄は物流だけでは食べていけません。物流ハブ機能などの仕組みを有効に使うビジネスの開発や誘致こそ、沖縄にとって本質的に求められる部分です。もっとも、こちらも徐々にですが前進しています。

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