越後の知恵生かし「雪室熟成食品」に挑戦!味はどう変わる?

天然氷温でおいしく。県外産品も受け入れ

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雪国ならではの発想
 天然の雪を利用した食品貯蔵庫である雪室―。雪室で食材を熟成させると甘みやまろやかさが増すほか、付加価値が高まった食材を収穫期以外に出荷できるなどのメリットがある。雪国の知恵と“食の宝庫”といわれる新潟県の食材を組み合わせた、にいがた雪室ブランド事業協同組合(越後雪室屋、新潟市中央区、佐藤健之理事長)の取り組みは県外だけでなく海外からも注目されつつある。

80商品超す認定


 雪国では冬に積もった雪を雪室にため、冷蔵庫として活用してきた。外気温などの影響で温度が変化する電気冷蔵庫と異なり、雪室内はほぼ室温0度C、湿度100%を安定的に保てる。そのため食品の細胞破壊を抑えられるほか、乾燥からも守れる。建物の冷熱システムとしても活用されており、雪を1トン使用すると、石油を10リットル、二酸化炭素(CO2)を30キログラムそれぞれ削減できるという。

 新潟県には約40の雪室があるといわれ、その一部で「越後雪室屋」ブランドの食品を生産している。越後雪室屋は県内企業26社で構成され、現在、19品目80商品以上ある。売れ筋は「氷温熟成こしひかり」や「雪室熟成肉 豚・和牛」「雪室珈琲」だ。

 新商品を発売する際には審査委員会でプレゼンテーションをする必要がある。毎月、新商品の申請があるものの「半分は却下される」と佐藤理事長。ブラッシュアップを重ね、厳しい審査をクリアした商品のみが越後雪室屋ブランドとして認定される。

中小の強み発揮


 越後雪室屋ブランド商品の売上高は2015年3月期で9000万円だったが、16年3月期には1億5000万円に増加した。佐藤理事長は「3、4年後には12億円にしたい」と言葉に力を込める。

 成長の背景には組織体制がある。多様な食品メーカーに加え、雪・広報・ブランディングの専門家、中小企業診断士、輸出アドバイザーらが参加しており、佐藤理事長は「さまざまな課題を組合内で解決できる」と説明する。商品をセットにして販売するなど食品メーカー同士のコラボレーションも容易だ。

 統一ブランドで展開することで、広告宣伝費や見本市への出展費が軽減できるほか、取引先と営業情報が共有できることから、販路の拡大にもつながる。また毎月の会議には各社から決定権者が出席するため、事業展開のスピードも速い。佐藤理事長は「中小企業の弱点を補完し強みを発揮できるビジネスモデルだ」と強調する。

日本発の技術に


 ブランドの認知は県外でも進んでおり、県外から食材を受け入れる「雪室留学」がスタートした。第1弾は高知県の栗で、雪室熟成することで糖度が20度になる。米国から果物を受け入れてほしいとの要望もある。

 雪室留学の費用は「自然エネルギーを使っているので、びっくりするほど安い」。今後は全国から“留学生”を受け入れる方針だが、スペースが限られていることから、将来は自前の雪室を持ち、商品を販売するとともに食事ができる複合施設を建設する計画だ。

 ブランディングを手がけるアドハウスパブリック(新潟市中央区)の関本大輔社長は「雪国の情緒と食を世界にPRする」と海外進出を視野に入れる。越後雪室屋の食材を使ったフルコースの開発や、雪室エステなどさまざまな構想がある。佐藤理事長は「オールジャパンで取り組み、日本のブランドにしたい」と雪国の知恵を世界に発信する構えだ。
(文=新潟・中沖泰雄)

日刊工業新聞2016年5月17日

COMMENT

宮里秀司
出版局雑誌部
企画委員

肉をはじめとして、ちょっとした食品の熟成ブームが起きています。各地域の風土や気候に合わせたご当地の熟成品が今後出てくるかも知れません。

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