大手企業の17年3月期、アベノミクス後初の減収減益見通し
収益拡大にブレーキ、円安のボーナスなくなる
上場企業の2017年3月期決算は、アベノミクスのスタート後、初の減収減益となる見通しだ。5月11日までに開示された主要上場企業767社の2016年3月期決算に基づくSMBC日興証券の調査によると、17年3月期は売上高が前期比1・0%減、経常利益が同1・6%減の減収経常減益となるもよう。悪化要因は円高と原油価格の上昇だ。
17年3月期の想定為替レートは1ドル=110円としている企業が多い。前期はおおむね1ドル=120円台で推移したため、売上高・利益が大幅に減少する。
SMBC日興証券の太田佳代子クオンツアナリストは「仮に1ドル=100円となれば減益率はさらに5ポイントほど下押しされ6・6%減となる」と予想。トヨタ自動車などは1ドル=105円と保守的に見ているが、米国の利上げ可能性が後退していることや、株式市場の低迷で安全資産とされる円買いが続く状況を見ると、楽観はできない。
17年3月期に回復が見込まれるのは、前期に巨額の特別損失を出した商社など。逆に電気・ガス業などは原油価格が前期より上昇基調のため大幅減益となる。機械は中国市場の低迷で、低い位置での横ばいが続くだろう。
ただ中国人の個人消費は衰えておらず、小売りなどインバウンド産業は比較的好調に推移すると見られる。
「ボーナスはなくなった」。トヨタ自動車首脳はこれまでの円安による追い風を、こう表現する。確かに16年3月期まで3期連続で営業利益の過去最高を更新したのは円安効果が大きかった。
トヨタは為替が対ドルで1円動くと営業利益が年間約400億円上下する。15年3月期は為替変動影響だけで2800億円もの営業増益要因となり、16年3月期も1600億円の利益を押し上げた。17年3月期はこれが一転、9350億円ものマイナス影響となる見通しだ。
首脳が円安を“ボーナス”と表現するのは、ここ数年の業績数値には実力以上のものが出ていたとの認識があるからだ。そして、そのボーナスはなくなった。円高など経営環境の変化を受け、豊田章男社長は「大きく潮目が変わった」と語った。ここからはトヨタの「等身大の実力」による持続的な成長力が問われることになる。
17年3月期の想定為替レートは1ドル=110円としている企業が多い。前期はおおむね1ドル=120円台で推移したため、売上高・利益が大幅に減少する。
SMBC日興証券の太田佳代子クオンツアナリストは「仮に1ドル=100円となれば減益率はさらに5ポイントほど下押しされ6・6%減となる」と予想。トヨタ自動車などは1ドル=105円と保守的に見ているが、米国の利上げ可能性が後退していることや、株式市場の低迷で安全資産とされる円買いが続く状況を見ると、楽観はできない。
17年3月期に回復が見込まれるのは、前期に巨額の特別損失を出した商社など。逆に電気・ガス業などは原油価格が前期より上昇基調のため大幅減益となる。機械は中国市場の低迷で、低い位置での横ばいが続くだろう。
ただ中国人の個人消費は衰えておらず、小売りなどインバウンド産業は比較的好調に推移すると見られる。
トヨタ「等身大の実力」
「ボーナスはなくなった」。トヨタ自動車首脳はこれまでの円安による追い風を、こう表現する。確かに16年3月期まで3期連続で営業利益の過去最高を更新したのは円安効果が大きかった。
トヨタは為替が対ドルで1円動くと営業利益が年間約400億円上下する。15年3月期は為替変動影響だけで2800億円もの営業増益要因となり、16年3月期も1600億円の利益を押し上げた。17年3月期はこれが一転、9350億円ものマイナス影響となる見通しだ。
首脳が円安を“ボーナス”と表現するのは、ここ数年の業績数値には実力以上のものが出ていたとの認識があるからだ。そして、そのボーナスはなくなった。円高など経営環境の変化を受け、豊田章男社長は「大きく潮目が変わった」と語った。ここからはトヨタの「等身大の実力」による持続的な成長力が問われることになる。
日刊工業新聞2016年5月13日