スケールメリットの壁を突き破れるか?ミニマルファブが始動

NEDIAの斉藤昇三会長インタビュー

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日本電子デバイス産業協会(NEDIA)の斉藤昇三会長
 電気機器関連メーカーを中心につくる日本電子デバイス産業協会(NEDIA)が、多品種少数に対応する半導体生産システム「ミニマルファブ」(用語参照)を採用した半導体受託製造会社(ファウンドリー)を1月に発足させた。社名はネイタス(東京都千代田区)で、2017年に約10億円を投じて国内に工場を構える計画だ。設立の背景や狙いについて、斉藤昇三会長に聞いた。

 ―ミニマルファブを採用したファウンドリーは業界初です。ネイタスではどういったサービスが可能になりますか。
 「1個から受託生産し、受託後5日以内にデバイスを完成させる。既存の生産手法は大量受注が基本で、納期も3―6カ月かかる。ネイタスは費用も100個当たり300万円程度と従来と比べ半分以下に抑えられる見込みだ」

 ―設立の背景には何がありますか。
 「あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの普及により、半導体に求められる種類が増え多品種少量生産のニーズは高まる。実際にNEDIAの会員企業にヒアリングするとミニマルファブへの期待は大きい。大量生産では海外工場にかなわない。ネイタスは少量生産に特化して成長を目指す」

 ―ニーズがあるなら一般企業がミニマルファブに乗り出すのではないですか。
 「一部装置で小型化が実現できないなどミニマルファブにはまだ課題があり、一般企業は二の足を踏んでいる。一方でベンチャー企業の活躍が想定されるIoTビジネスではスピードが重要。そこでNEDIAが主導して事業化に乗り出すことにした。NEDIAは『この指止まれ』のスタンスで、ネイタスでは今も出資者を募っている」

 ―今後のスケジュールは。
 「設立後6カ月間は準備会社として運営し、その後、本格展開する。月産5000枚の規模で工場を立ち上げ、まずは大学や企業の研究機関の需要を開拓する。20年に売上高100億円というのが一つの目標だ」

 ―NEDIAの今後の活動は。
 「『モビリティ』といった注目産業の技術動向などをまとめた『戦略マップ』を初めて作成した。会員企業が経営戦略を立案する際に、”気付き“を与えられるよう考慮して編集している。NEDIAも戦略マップに沿って新事業を立ち上げていく」
<略歴>
斉藤昇三さいとう・しょうぞう 73年(昭48)早大理卒、同年東芝入社。06年執行役常務、12年副社長、13年常任顧問。NEDIA会長には13年9月就任。岐阜県出身、65歳。

【用語】ミニマルファブ=最小限の設備で製造する小規模半導体工場。産業技術総合研究所が中心となり研究開発を進めてきた。従来の大口径ウエハーではなく直径12・5ミリメートル(0・5インチ)の小型ウエハーを1個ずつ加工する。装置も小型化でき多品種少量生産を低コストで実現できると期待されている。

【記者の目/事業の成否、顧客開拓がカギ】

多品種少量生産への需要の高まりという、半導体産業の変化に素早く対応したネイタスへの期待は大きい。ただ「数個」などという極端に少ない単位の受注を掘り起こしていくのは容易ではないだろう。ビジネスを軌道に乗せるには、ミニマルファブの生産技術向上とともに、顧客開拓の工夫が必要になりそうだ。(後藤信之)

日刊工業新聞電子版2016年2月23日

COMMENT

尾本憲由
編集局
ニュースセンター長

典型的な設備産業っである半導体は大量生産が命。プロセスの微細化とウエハーの大口径化を繰り返し、高性能化とコストダウンを追求してきた。ミニマルファブはこの世界に少量生産を引っ提げて殴り込みをかける。ニーズは確かにある。ただ多種多様なニーズを実現する手段(半導体)が必ずしも多種多様である必要はない。実際、汎用品のマイコンやFPGAなどを駆使すればある程度ニーズを満たすことができる。この現状を打破するには、よほど大きな利点を訴求していかなければならない。

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