「かんぽの宿」赤字継続。オリックスへの売却にストップをかけた代償は大きい

会計検査院が経営状況を報告。改善が見込めない施設は日本郵政に譲渡を求める

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 日本郵政が郵政公社から引き継いだ「かんぽの宿」などの宿泊施設について、会計検査院が12日に経営状況に関する報告を公表した。2012ー14年度の平均で66施設中、47施設で営業赤字だった。

 引き継いだ07年度の時点で54施設が赤字、うち45施設で赤字が継続している。また27施設はコスト面も悪化しており、検査院は改善が見込みにくい施設は譲渡などを検討するよう求めている。日本郵政は「課題は認識しており、引き続き経営改善を進めたい」としている。

 今回の検査は、昨年11月に日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命が株式上場したことを踏まえ実施された。宿泊事業は、引き継いだ後の08年度以降、毎年度営業損失を計上し、14年度は約29億円の赤字だった。利用者は07年度の約209万人から14年度には約169万人まで減少している。54施設のうち14年度の客室稼働率が07年度から下がった所も40施設ある。

 検査院は赤字が継続しえている理由として「リーマン・ショックによる景気低迷」や「主要顧客の高齢化」などを挙げている。政府は保有する日本郵政株を段階的に売却、収入を東日本大震災の復興財源に充てている。検査院は「グループ全体で企業価値を向上させ、復興財源確保に貢献することなどが求められる」と指摘した。

逓信病院も売却の声根強く


日刊工業新聞2015年12月23日付「郵政上場の衝撃」より


 無事に株式上場した日本郵政だが、運営する宿泊施設「かんぽの宿」と逓信病院は苦戦が続いている。民間の同業他社との厳しい競争などにより、2014年度も宿泊事業と病院事業を合わせて89億円の営業赤字だった。

 かんぽの宿で思い出されるのが、08年のオリックス不動産への一括売却問題だ。約70カ所の宿などを109億円で一括売却する契約を結んだが、売却先が規制改革を進めた宮内義彦氏率いるオリックスグループだった。そのため鳩山邦夫総務相(当時)が「国民ができレースと受け取る可能性がある」と待ったをかけ、契約は09年に白紙撤回された。

 その後、郵政株式売却凍結法によりかんぽの宿の譲渡・廃止が禁じられた時期もあり、合理化への取り組みが再開したのは14年になってからだった。

 かんぽの宿の不採算施設の整理を進めたい日本郵政は、14年と15年に運営を外部委託する「かんぽの郷」も含め草津(群馬県草津町)や道後(松山市)など計16カ所の営業を終了。「地域事情も考えて一つずつやらなければいけない」(西室泰三社長)と、個別に売却を進めている。

 07年の民営化時に69カ所あったかんぽの宿とかんぽの郷は、49カ所(休館中の4カ所を除く)まで減少。「ひとまずめどがついた」(阿久津卓也宿泊事業部長)と、当面は今の施設数で経営改善を進める方針だ。

 「10年ぶりの大型投資」(同)も行い、12月22日に熱海(静岡県熱海市)、16年は奈良(奈良市)などのかんぽの宿をリニューアルオープンさせ、集客力アップを狙う。

地域医療などにも配慮しながら


 一方、逓信病院は1938年に職域病院として設立。地域医療ニーズに応える良質な医療提供を目指して設けられたが、病床数が少ない比較的小規模病院が多く、特色ある専門性も打ち出せず、患者の減少傾向が続いた。「効率化のほか、大病院との連携強化により患者を紹介してもらうなどしてきた」(橘高茂病院管理部担当部長)ものの、全病院が赤字経営だった。そこで4月に、全国14カ所にあった病院のうち仙台、新潟、神戸の3カ所を民間病院に売却した。

 今後は未定だが、売却する場合は地域医療などにも配慮しながら進めていく。ただ、両事業とも効率化や一部施設の売却などに取り組み経営改善に努めているが、黒字化の道筋はまだ見えてこない。「経営ノウハウのないものに手を付けた。すべて売却でいいだろう」(立原繁東海大学教授)との声は根強くある。
(肩書き内容は当時のもの)


 

日刊工業新聞2016年5月13日

COMMENT

安東泰志
ニューホライズンキャピタル
会長

2008年に当時の日本郵政がオリックスへの売却を決めたにもかかわらず、鳩山総務大臣がストップをかけた経緯が記憶に新しい。当時、雇用維持の条件を満たしつつ、年間50億円とも言われる赤字事業だったかんぽの宿を100億円を超える価格で買うとの破格の申し出を政治的思惑で潰した代償は大きい。

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