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「ルノー・日産・三菱自」960万台に相応する競争力は簡単に構築できない

トヨタは「規模」以外へ。標準化ばアジアに強い三菱自の持ち味を失う可能性も
 日産自動車三菱自動車を傘下に収めることになった。ルノー・日産連合の年販規模は850万台。110万台規模の三菱自が傘下に入ることで、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の1000万台組に肉薄する。ルノーと日産のCEOを兼務するカルロス・ゴーン氏は12日、日産の決算会見で「1000万台は結果であって目標ではない」と話したが、これまでもロシア最大手アフトワズを買収するなど規模拡大を追求してきた。

 地域的な補完で見ると、日産としてはタイやインドネシアに固い事業基盤を持つ三菱自の経営資源を活用できるメリットもある。両社が攻めあぐねているその他の新興国でも両社の経営資源を持ち寄れば事業を拡大しやすくなる。両社はEVやプラグインハイブリッド車(PHV)で先行しており、「電動化技術でのリードを拡大できる」(同)可能性もある。ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)は後れを取っており、技術開発でのシナジーも追求する方針だ。

 マツダと包括業務提携し、ダイハツ工業の完全子会社化を決めたトヨタの豊田章男社長は、11日の決算会見で「ライバルとの協業は刺激になる。もっといい車づくりができる相手であればどことでもオープンに仕事をしたい」と一層の提携拡大に前向きだ。日産と三菱自の資本提携が業界再編を加速する可能性がある。
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日刊工業新聞2016年5月13日「深層断面」から一部抜粋 
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
単なる数字の積みあげで競争力が拡大するわけではない。ルノー・日産・三菱連合を合わせれば、853万台と107万台で960万台の勢力となり、世界トップがついに視野に入った。しかし、この960万台に相応する競争力が簡単に構築できると安易に取るべきではないのである。ルノー・日産の世界戦略は、標準化を進め、共通化と規模拡大を競争力の源泉に置こうとする。しかし、もはやトヨタは規模以外にその源泉を見出そうとする。VWもホンダも考え方は変わった。数字合わせで伸ばそうとしても、三菱自動車が簡単にフィットし効果を発するとは言い切れない。標準化を進め過ぎれば、アジアに強い三菱の持ち味すら失いかねないのである。

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