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「SUBARU」で研究開発をさらに底上げ

21年に自社EV投入「スバルらしさが出るものにしたい」(吉永社長)
「SUBARU」で研究開発をさらに底上げ

吉永社長

 富士重工業は12日、2020年度を最終年とする中期経営計画を見直し、同年度の世界販売台数を10万台プラスの120万台超に再設定すると発表した。米国での販売が想定を上回って好調に推移したため。また21年の電気自動車(EV)発売や、社名を「SUBARU(スバル)」に変更する計画を新たに打ち出した。一方、規模拡大よりブランド価値向上を優先する基本姿勢は堅持し、堅実路線で成長維持を目指す。

 社名変更は17年4月1日。見直した中期計画では生産能力について15年度の85万4000台を16年末に103万6000台、18年度末までに113万2000台に引き上げる方針を示した。ただ吉永泰之富士重社長は「生産能力は強気の数字ではない。今の販売の勢いからすると足りないぐらい」と説明した。

 富士重は14年5月に20年度までの中計を策定した。北米ではスポーツ多目的車「アウトバック」や「フォレスター」などが好調に推移し、20年度に60万台(13年度は48万台)としていた北米の販売計画は、15年度に約5年前倒しで達成した。現地では継続的に在庫不足が続いており、今回、いち早く生産増強に動き、販売台数目標を再設定することにした。商品展開では21年にはEVを投入する計画を新たに打ち出した。EVについて吉永社長は「(走りの良さを重視する)スバルらしさが出るものにしたい」とした。ハイブリッド車(HV)の開発ではトヨタ自動車と協業するが、EVは「当面は自社で開発を進める」方針を示した。

 ガソリン車は19年に新型エンジンを投入し燃費向上を図る。研究開発費は16年―18年度に3600億円を計上する。また研究開発体制を強化するため群馬製作所本工場(群馬県太田市)を拡張し、研究開発棟を新設する構想を明らかにした。
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日刊工業新聞2016年5月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
富士重の快進撃は08年に決断した軽自動車の撤退から始まったと思う(実際の生産終了は2012年)。登録車に経営資源を集中させ、軽の開発担当者約200人が登録車部門に移ったことで開発力が飛躍的に高まった。スバル車の価値とは突き詰めれば水平対向エンジンと4輪駆動(4WD)に集約される。今回、電気自動車の自社開発に取り組むことを発表。集中と選択を実践してきた吉永社長のことだけに間違いはないと思うが、開発で「何をやらないか」をしっかり見極めないと、せっかくの社名変更のブランディングが毀損してしう。

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