熊本地震1カ月、保険金を早く被災者に…損保、支払体制を強化
熊本地震の発生から14日で1カ月。復旧・復興の動きが一部で進む中、生活再建の資金として重要な役割を果たすのが損害保険会社の支払う保険金だ。現状では600億円以上の保険金がすでに支払われ、今後も保険金額はさらに増える見通し。各社は本格化する保険金の支払い業務に備え、体制の強化を進めている。
日本損害保険協会によると、9日時点で熊本地震関連の地震保険の事故受付件数は15万1518件に及んだ。このうち、保険金の支払いが完了したのは4万342件、金額はすでに約610億円に達している。
ただ、調査の完了していないものがまだ10万件以上もある。この現状からすると、保険金支払額は1995年の阪神・淡路大震災の783億円を超える可能性が出てきた。各社は保険金支払いが本格化する段階を見据え、体制を強化している。
損保ジャパン日本興亜は8日時点で九州に約900人を応援部隊として派遣。さらに現地の営業社員も損壊した住宅などの立ち会い調査を始めている。熊本支店長の野間和子執行役員は「社員や代理店が一丸となり、保険金の支払い業務に最優先であたっている」と現状を話す。
東京海上日動火災保険は13年に本格導入した損害サービスシステムなどが効果を発揮。被災地から離れた遠隔地でも事故に関連した情報がシステム上で共有されることから、全店レベルでの対応が進む。このため、被災地で支払い業務に従事する担当者は過去の災害と比べて、支払い業務により注力できているという。
あいおいニッセイ同和損害保険は熊本・大分・福岡の3県に損害調査のための立ち会い拠点を設置。さらに東京・新宿には約220人体制による地震保険サービスセンターを設置し、事故受け付けや保険金支払いを集中化して対応する。
三井住友海上火災保険も東京に危機対策本部、福岡には災害対策室、熊本は立ち会い拠点を設置したほか、事故受け付けセンターでも人員を増員。事前の計画通りに対応が図られているという。
地震保険は保険金額が火災保険金額の30―50%の範囲内に限られるなど元々上限が設定されている。とはいえ契約者からすれば受け取った保険金は今後の生活再建に欠かせない重要な資金にはなる。損保会社の今後の対応は被災者の復興を支えるだけでなく、「保険金の迅速な支払いは、保険会社の責務」と日頃から強調する各社の真価も同時に試されることになる。
(文=杉浦武士)
阪神に迫る規模
日本損害保険協会によると、9日時点で熊本地震関連の地震保険の事故受付件数は15万1518件に及んだ。このうち、保険金の支払いが完了したのは4万342件、金額はすでに約610億円に達している。
ただ、調査の完了していないものがまだ10万件以上もある。この現状からすると、保険金支払額は1995年の阪神・淡路大震災の783億円を超える可能性が出てきた。各社は保険金支払いが本格化する段階を見据え、体制を強化している。
損保ジャパン日本興亜は8日時点で九州に約900人を応援部隊として派遣。さらに現地の営業社員も損壊した住宅などの立ち会い調査を始めている。熊本支店長の野間和子執行役員は「社員や代理店が一丸となり、保険金の支払い業務に最優先であたっている」と現状を話す。
全店で情報共有
東京海上日動火災保険は13年に本格導入した損害サービスシステムなどが効果を発揮。被災地から離れた遠隔地でも事故に関連した情報がシステム上で共有されることから、全店レベルでの対応が進む。このため、被災地で支払い業務に従事する担当者は過去の災害と比べて、支払い業務により注力できているという。
あいおいニッセイ同和損害保険は熊本・大分・福岡の3県に損害調査のための立ち会い拠点を設置。さらに東京・新宿には約220人体制による地震保険サービスセンターを設置し、事故受け付けや保険金支払いを集中化して対応する。
三井住友海上火災保険も東京に危機対策本部、福岡には災害対策室、熊本は立ち会い拠点を設置したほか、事故受け付けセンターでも人員を増員。事前の計画通りに対応が図られているという。
生活再建資金に
地震保険は保険金額が火災保険金額の30―50%の範囲内に限られるなど元々上限が設定されている。とはいえ契約者からすれば受け取った保険金は今後の生活再建に欠かせない重要な資金にはなる。損保会社の今後の対応は被災者の復興を支えるだけでなく、「保険金の迅速な支払いは、保険会社の責務」と日頃から強調する各社の真価も同時に試されることになる。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2016年5月13日 金融面