「匠」の技に注目。外資製造業の大阪進出が増加中

インバウンド効果が波及、製造業も続々

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 大阪における外国企業の誘致が盛んになっている。大阪外国企業誘致センター(O―BIC)の2015年度の誘致実績が2年連続で過去最高となり、インバウンド(訪日外国人客)を背景に越境EC(電子商取引)の誘致も増えている。O―BICによる最近の誘致事情を追った。

「日本製」に意欲


 O―BICは、01年に大阪府、大阪市、大阪商工会議所が外資系企業の大阪進出支援を目的に設立したワンストップ・サービス・センターだ。15年度の誘致実績は、インバウンド関連が11件と大幅に増えて46件(14年度は38件)と、2年連続過去最高となった。累計では15年度までに426件を誘致している。

 15年度は設立から5件目となる製造業を誘致した。家電用や化粧用ブラシを年間8000万本生産する中国の上海慎興ブラシ(上海市)が3月に設立した製造拠点(慎興ブラシ、大阪市生野区、安田重満社長)がそうだ。「ブラシが地場産業の八尾市や東大阪市に近く、協力可能な企業が多い大阪以外考えなかった」(安田社長)と理由を明かす。今後は、生産体制を整備して協力企業に歯ブラシの植毛工程を委託し、完成品を「日本製」として中国本社へ納入する予定だ。早ければ1年後にも植毛機械を導入し、自社ブランドを目指す。

 一方、白物家電大手で電子レンジを得意とする格蘭仕(ギャランツ、広東省)は1月、同社初の海外研究拠点となるギャランツジャパン(大阪市住之江区)を設けた。ギャランツのソン・ヒ日本市場担当は「大阪には世界トップレベルの開発技術、経営哲学、生産技術を持つ家電メーカーがある。今、中国で『匠(たくみ)』の精神が注目されており、日本企業と連携して技術を磨き自社製品を開発したい」と意気込む。

アジア市場近く、産業集積も強み


 梁瑜(りゃんゆ)O―BIC国際部主任は誘致増の要因に「インバウンド効果は当然大きいが、大阪が東京に比べ、アジアに近く賃料が6―8割程度であり、日本進出を試す際のよい場所と見られている」と分析する。長年の傾向として誘致の多くは貿易関連が占め、多くの雇用が見込める製造業が少ない。加えて為替や景気に大きく左右されるインバウンドに期待するのも大変危険だ。

 しかし、大阪には独自技術を持つ中小企業や電気・電子関連企業の集積があり、健康・医療分野や次世代電池産業にも強みがある。今回の企業のように大阪が開発に最適であるとの理解が進めば、多くの「メード・イン・ジャパン」が大阪から生まれる日も近い。
(文=大阪編集委員・青木俊次)

日刊工業新聞2016年5月12日 中小企業・地域経済面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

技術や産業の集積を地域資源と捉えれば、地方都市にも海外企業を誘致するポテンシャルはあるはず。地方の自治体はプロモーションに予算をかけられないとか、物流が不便といった障害はあるが。 また、資源を荒らされて誘致企業の撤退後にぺんぺん草も生えない、という状況を避けるためには、地域資源を磨いて育てる体制を自治体側もつくる必要あり。大阪の場合とはちょっと違いますが、佐賀県の化粧品産業誘致の取り組みは、まだ道半ばながら好例かもしれません。

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