「森の香り」で都市包む―エステーの壮大な計画とは

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3月に発売した自動車内に置くタイプの空気浄化剤
 森の香りで都市の空気をきれいにしよう―。エステーが壮大な計画に取り組んでいる。同社は森林オイルに含まれる有機化合物「β―フェランドレン」が二酸化窒素(NO2)と空気中で混ざり合うと、分子同士が集まり無害化する性質を持つ点を活用した技術ブランド「クリアフォレスト」を開発し、空気浄化剤を販売している。「健康な生活に向け、最先端の研究をしている」(奥平壮臨エアケア事業本部クリアフォレスト事業部長)と自負する。

 森林に身を置いてストレスが解消できたという経験を持つ人は多い。エステーの完全子会社、日本かおり研究所(東京都新宿区)の金子俊彦社長は「その理由を解明できないか」と考え、2007年に森林総合研究所(森林研)の門をたたいた。当初、着目したのはスギとヒノキだった。

 しかし研究を進めるうちに、北海道に多いトドマツが、NO2と結びついた空気浄化作用が強いことが判明した。排ガスに含まれているNO2は、微小粒子状物質(PM2・5)の発生原因の一つとされている。
 樹木の香りは葉から多く放出される。トドマツの幹は木材として活用されているが、間伐材の枝葉は放置されたままだった。この枝葉から香り成分を抽出しNO2除去に生かそうと考えた。

 未利用の枝葉を搬出するシステムを北都(北海道釧路市)と、枝葉から精油と精水を抽出する「マイクロ波減圧コントロール抽出装置」を森林研と共同開発した。「空気を浄化する商品を作るために空気を汚してはいけない」(金子社長)と抽出装置は電気で動く仕組みにし、約50度Cの低温で抽出して変質を防ぐ。

 抽出後の残りかすは粉末化して紙に混ぜるなど活用しており「ゼロ・エミッションを実現している」(同)と胸を張る。抽出装置の活用場所は北海道だけでなく、熊本県では消臭芳香剤の材料のみかんの皮に使っている。抽出液には大気汚染低減のほか、抗酸化機能、消臭効果、森林浴の四つの効果がある点を森林研との共同研究で突き止めた。花粉症などのアレルギー反応を緩和する効果も学会発表した。

 クリアフォレストを用いたエステーの車内向け空気浄化剤は、同社の調べで1時間でNO2を約7割低減した。技術を広めるため材料調達や抽出装置の製造、設置、製品化などで企業や公的機関と連携している。アットアロマ(東京都世田谷区)との提携では、部屋全体に香りを拡散して空気の浄化などができる芳香機を14年に発売した。

 喫煙室に、工場に、介護施設に、トンネルに―。用途の構想は広がる。「すべての家庭に森の香りを運び、暮らしを快適にしたい」と金子社長は夢を描く。

日刊工業新聞2015年04月30日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

「空気を浄化する商品を作るために空気を汚してはいけない」―製品だけでなく、製造工程でも空気をきれいにする。一歩先をゆく素敵な取組みだと思います。 「森の香り」って曖昧だなあと以前から思っていたのですが、きちんとした技術に裏付けられたものだと知り興味が湧きました。

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