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三菱電機、上海のビルに世界最速エレベーター技術

「上海中心大廈」に7月から適用。台北「TAIPEI101」の東芝製抜く
三菱電機、上海のビルに世界最速エレベーター技術

「上海中心大廈」

 三菱電機は10日、世界最高速となる分速1230メートル(時速73・8キロメートル)のエレベーター技術を開発したと発表した。同社が納入した高層ビル「上海中心大廈」(上海市、地上632メートル)のエレベーター向けに、同技術を7月中旬に適用する。地下2階から地上119階の展望階まで約53秒で到達できる。

 制御盤や安全装置を新たに開発し、乗り心地や省エネ性を確保した上で世界最高速を実現した。これにより同ビル向けエレベーターで達成していた世界最速を更新する。 

 上海中心大廈は現在、開業に向けて内装工事が進んでいる。すでに三菱電機は展望階行きエレベーター3台を受注し、世界最速の分速1080メートルを実現して納入した。このうち昇降高を確保できる1台の速度を分速1230メートルに引き上げる。

 現在、営業中のビルでは、台湾・台北市の「TAIPEI101」に納入した東芝製エレベーターの分速1010メートルが世界最高速となる。

アジアで開発体制強化、中国の成長率鈍化


2016年3月25日


 三菱電機はアジアで昇降機事業の開発体制を強化する。7月に開設するインド工場の隣接地に試験棟を設置し開発・検証機能を整えるほか、12月にはタイ工場(チョンブリ県)に新たな試験棟を設けて研究開発能力を引き上げる。2017年には韓国の新工場(仁川広域市)の隣接地に研究開発センターを併設する。世界最大の中国市場が減速する中、需要が堅調なアジア市場を深耕し補完する構えだ。

 三菱電機はインドのベンガルールに初の昇降機工場を建設する。工場が稼働すると関税や輸送費などのコストを削減でき、価格面の競争力を向上できる。さらに敷地内に高さ約41メートルの試験棟を開設して検証機能を整備。品質を高めて高級機種の市場で信頼性を訴求し顧客を獲得する。

 タイ工場では14年にR&Dセンターを開設しており、高さ約59メートルの新試験棟を整備することで開発・検証機能を強化する。タイ工場は海外市場に向けて輸出にも力を注ぐなど、中核拠点として機能している。海外に適した製品の開発や検証の期間を短縮し、国際競争力を強化する。

 一方、韓国では17年に工場を開設する。R&Dセンターを併設して高さ約80メートルの試験棟を設けるほか、日本国内の開発機能の一部を移管する。「研究開発機能を持たせることで開発できる高速機種の幅を広げ、グローバル市場に投入したい」(同社幹部)という。

 中国市場は20年度に15年度比2割増の74万台になるとされるが、成長率は鈍化しており、新たな市場の開拓が急務になっている。昇降機ビジネスは、冷房の強さなど現地の好みやニーズに左右されやすい。三菱電機は新市場の開拓に向け、品質力や開発力を強化して顧客ニーズに迅速に対応する。
日刊工業新聞2016年5月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
三菱電機の中国における昇降機事業は現地大手電機メーカーが主導する合弁「上海三菱電梯(SMEC)」と、三菱電機がマジョリティーを持つ「三菱電機上海エレベーター(MESE)」の二つの事業会社がある。SMECで販売するのは圧倒的多数の標準型。製品には“スリーダイヤ”のブランドも付いていない。MESEは、現地工場で製造した三菱ブランドの高級機が主力で2ブランド戦略が同社のシェア拡大に貢献してきた。中国の昇降機事業に不透明感が漂う中で、この戦略をどう維持していくか。日立製作所は折半だった現地の昇降機子会社をすでに日本側主導に変更している。他のアジア各国では開発体制以上に、販社や保守などの整備が課題になる。

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