「ピエリ守山」「テラスモール湘南」…大手商社が手がけた商業施設が活況な理由

独自のコンセプトやアイデアを盛り込む。地域活性化の牽引役になるか

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“湘南地域ならでは”のユニークなテナントも入居する「テラスモール湘南」
 国内で大手商社が開発・運営する商業施設が活況を呈している。開発競争が激化する中、独自のコンセプトやアイデアを盛り込むことで、施設がある地元の住民はもちろん、海外からの集客に成功している例もある。観光地としての側面に加え、政府が力を注ぐ“地方創生”に向け地域経済活性化の牽引(けんいん)役としても期待がかかる。

“地域メイド”


 住友商事は首都圏と関西地域を中心に全国で、郊外型や駅前専門型などの商業施設の企画立案や開発、運営管理を手がける。商業施設を街づくりの中核拠点と位置づけ、地元の文化を尊重しつつ顧客ニーズに適した“地域メイド”の運営方針を掲げることで集客につなげている。

 2011年11月には神奈川県藤沢市に、店舗面積約5万9000平方メートル、店舗数約280店の大型商業施設「テラスモール湘南」を開業した。休憩場所を多く設けるなどして居心地の良さを追求したほか、しらす料理店やアイスクリーム店など“湘南地域ならでは”のユニークなテナントも入居。15年度は売上高が前年度比2・7%増の約540億円、来場者数が同0・8%増の約2330万人と3年連続で増加を達成した。17年にはリニューアルを予定しており、一層の集客が期待される。

 商社が商業施設事業を展開する上で、関連部門との連携や事業基盤の活用は大きな強みと言える。丸紅は東京と神奈川で自社ブランドの商業施設「Luz」を運営しているが、商社の利点について「国際規模のネットワークを活用して、多様化する顧客ニーズの先を読み、商業施設の価値を創造すること」と強調する。

 住商の羽鳥貴弘事業推進チームリーダーは、コスト管理面に加えて「材料調達の総合力」を挙げる。テラスモール湘南を建設中だった11年3月に東日本大震災が発生。資機材の確保が難しくなり、開業延期の不安もよぎったものの、グループで資機材調達に力を注いだことで予定通りの開業にこぎ着けた。


外資導入、他店と差別化


 集客力が落ち込んだ施設の再生を商社が手がけ、にぎわいを取り戻した例もある。滋賀県守山市、琵琶湖のほとりに立地する大型商業施設「ピエリ守山」。外資系ファストファッションのテナント数の多さや屋外体験型施設が話題となり、地元の新たな観光施設として注目を集めている。

 同施設は08年に開業したが、近隣に開業した競合店に顧客を奪われ、テナント数は一時4店舗まで減少。それでも営業を続けていたことで、「明るい廃虚」と揶揄(やゆ)されていた。

 転機が訪れたのは、14年のリニューアルオープンだ。双日はオープン前からプロジェクトに参画し、子会社の双日商業開発(東京都港区)が運営を受託している。

 他店との差別化に向けて、「ZARA」や「GAP」をはじめとした外資系アパレルを呼び込んだほか、琵琶湖に面した立地を生かしたバーベキュー場や館内動物園を段階的に導入。双日商業開発の近藤哲生取締役は、こうした体験型施設について「集客効果につながっている」と手応えを語る。

(「ピエリ守山」の館内動物園)

インバウンドを意識


 商業施設の認知度が高まり観光資源化する中、訪日外国人旅行者(インバウンド)の誘致に向けた動きも広がっている。

 双日は、ピエリ守山で15年9月に免税カウンターを設置したほか、琵琶湖の遊覧船ツアーからの集客などを見込む。住商はテラスモール湘南で、ツアーバスの駐車場を確保したほか、外国語の案内板も充実させる方針だ。

 商業施設は地域活性化の役割を期待される一方で、集客力の維持・向上が不可欠。テナントの入れ替えや集客のための施策を通じ、地域の特性やニーズの変化に応じて進化させていくことが求められる。
(文=土井俊)

日刊工業新聞2016年5月5日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

「ピエリ守山」は以前“廃墟っぷり”が話題になっていましたが、今は好調なのですね。 地域が商業施設に期待するのは、誘客や生活の利便性向上もそうだが、雇用創出の効果も大きい。大型施設ができると、人集めのために時給を上げるので、給与相場が上昇することもある。それはそれで一長一短はあるが、地元に仕事ができるというのは、何よりの地域活性化だと思う。

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