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単なる客寄せから脱し始めたロボット行員。マイナス金利も後押し?

サービス向上へ金融機関が実用化検証。将来はATMと連動も
単なる客寄せから脱し始めたロボット行員。マイナス金利も後押し?

銀行で働くペッパーは「客寄せ」以上の価値を生むか

 銀行員がみんなロボットに―。そんなSF映画のような光景が実現する日は意外に近いかもしれない。ソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」など人型接客ロボットを店舗に設置する銀行が増えている。

 機能的にはまだ「客寄せ」の域を出ないが、各行は人間が担ってきた仕事のコンピューター化を加速させており、銀行の姿は大きく変わる可能性がある。カギを握るのは人工知能(AI)だ。

 三菱東京UFJ銀行は2月、米クイズ番組で人間のチャンピオンを破り有名になったIBMの人工知能「ワトソン」を使った照会サービスを始めた。無料通信アプリLINEで「一番近い支店はどこ」などと質問を送るとワトソンが関連情報を瞬時に返信する。

 学習能力を持つため、利用回数が増えるほど回答の精度が上がるという。同行はワトソンとチャット形式でやりとりして運用相談ができるサービスも計画中。小山田隆頭取は人工知能について「融資の審査への活用など、かなりのことを試行している」と語る。

 みずほ銀行の店舗には5月、ワトソンと接続して会話機能を強化したペッパーが登場する。当初の役割は宝くじ関係の照会に限られるが、最終的に同行が目指すのは無人店舗の実現だ。

 インキュベーション室の井原理博氏は「将来的にはペッパーが資産運用の相談を受けることも可能になる」と強調する。銀行が変革を急ぐ背景には、ITの革新的技術と金融を融合させる「フィンテック」が「今後の金融業のあり方を大きく変える」(国部毅全国銀行協会会長)との危機感がある。

 人口減少やマイナス金利政策による収益悪化が懸念される中、サービスの利便性を高めコスト削減にも寄与するフィンテックは国内銀行にとって脅威であると同時に成長の好機でもある。

NTTデータが地銀と組み地域特性を把握


 NTTデータは金融機関の顧客対応支援を目的に岩手銀行と福井銀行、京都銀行でコミュニケーションロボットを活用した実証実験を順次開始する。銀行のロビーや窓口カウンターなどの顧客対応エリアにロボットを設置。来店した顧客に対し、住宅ローンなど商品紹介の対話を行う。

 ロボットの有効性を検証し、2016年度内に商用化を目指す。今回の実証で、店頭に設置したロボットを通して、各地域の特性や特色を把握するための対話情報を収集する。この対話情報や行員の助言をもとにロボットの会話シナリオの向上や顧客対応業務の効率化に役立てる。

 NTTデータでは、ロボットの活用方法については、顧客対応支援だけでなく、ATM、番号受付機などとの連携による業務効率化、マーケティング活用を想定する。さらに、対話の多言語化など機能を向上させ、インバウンド(訪日外国人)向けのサービス展開も検討する。
日刊工業新聞2016年5月3日/4日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
金融機関では業務の効率化を目的に機械化やBPO(仕事の外部委託)化が進んでいる。ATMはその最たる例だ。一方で最近はATMのみで作業を完結する客が7-8割に上り、銀行窓口との接点が薄くなっている点が課題にもなっているという。ロボットは銀行のコスト削減と客へのサービス向上という、一見相反する課題を解決する糸口になるのだろうか。

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