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ゆうちょ銀行がプライベート・エクイティ投資を始めるワケ

国債利回りでは貯金金利を賄えず。リスク対比リターンを上げざるを得ない
 日本郵政グループのゆうちょ銀行は6月にも、主に未上場の企業に投資するプライベート・エクイティ(PE)投資を開始する。現在、金融庁と調整しており、認可が下り次第開始する。また、年内にはヘッジファンドや不動産投資信託(REIT)の活用も始める予定。マイナス金利の中で債券や株式に代わるオルタナティブ(代替)投資を拡大させる。 

 2015年11月に上場したゆうちょ銀行は、株式や外国証券などサテライト・ポートフォリオ(SP)を、当時の46兆円から17年度末までに60兆円に拡大する中期経営計画を策定した。ただ、すでにこの目標は前倒しで達成している。 

 ゆうちょ銀は15年12月時点で国債での資産運用を全体の40・8%まで減らしたが、企業などへの貸し付けが禁止されているため運用資産約205兆円のうち約84兆円が国債での運用。マイナス金利の影響を最小限にするため株式や米国債購入を加速している。

 ただ、米国債など外債は円高が進むと評価損が出る。このため新たにPEやREITなどのオルタナティブ投資を加速し「SPを最適化する」(佐護勝紀ゆうちょ銀副社長)方針だ。
日刊工業新聞2016年5月5日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
融資が出来ないゆうちょ銀行の場合、投資ポートフォリオの多様化によりリスク対比リターンを上げていく必要がある。特に日銀のマイナス金利政策の中、預入限度額が引き上げられることによりマイナス金利適用額が膨らむ上、国債利回りではコスト込みの貯金金利を賄えない。伝統4資産(国内債・国内株式・海外債・海外株式)への分散投資は当然として、これらと相関が低いPEなどオルタナティブ投資を行うことはリスク対比リターンを上げるために避けては通れない。海外の公的年金等では、概ね運用総額のま10~15%をPEに投資している。

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