「ポスト京」何に使う?
まずは観測を超える強い地震動の計算に着手
2020年度の運用開始を目指し、日本最速のスーパーコンピューター「京(けい)」の後継機「ポスト京」の開発が進んでいる。性能は、アプリケーション(応用ソフトウエア)の実効性能で京の最大100倍に達する見通し。装置の開発に並行して、16年度からアプリケーションの開発も本格化した。ポスト京は、京で1年かかっていた計算を5日程度で解く。都市全体の高精度な災害予測や、効率的な医薬品開発などに威力を発揮するとみられる。
アプリケーションの開発として重点的に取り組むのは、医療、防災、エネルギー、モノづくり、宇宙分野における九つのテーマ。特に防災分野では、地震や津波による複合災害の予測を目指す。4月に発生した熊本地震のように、強い地震が立て続けに起こった場合、観測値を超える巨大な地震動(地震によって発生する揺れ)が生じる可能性がある。
4月26日に文科省で開かれた京の評価委員会の冒頭で、理化学研究所・計算科学研究機構の平尾公彦機構長は、熊本地震を受けて、京を使って「観測を超える強い地震動(強震動)の計算に着手した」ことを明らかにした。
ポスト京ではさらに、精緻な都市モデルを使い、地震発生時の建物の損壊や人の流れに加え、社会基盤の損害状況なども考慮した現実的な防災計画をシミュレーションする。東京大学地震研究所の堀宗朗教授は「首都直下地震や南海トラフ地震を想定し、地震の被害が経済にどのような影響を及ぼすかまで予測する」と話す。
新薬開発の期間短縮やコスト削減効果が見込める、創薬分野での期待も大きい。京では、たんぱく質やDNAの動きはマイクロ秒(マイクロは100万分の1)単位でしか再現できなかったが、ポスト京ならミリ秒単位で解析できる。理研生命システム研究センターの奥野恭史客員主管研究員は「薬作りの発想が変わる。10年後に薬ができたときのリターンは強烈なものになる」と見通す。
産業競争力を強化するモノづくり分野では、デバイスと材料開発の領域で大規模な計算を行い、データ科学の手法を使って次世代の磁石材料などを探索する。設計・製造プロセスの開発では、「京ではできなかった航空機の実スケールの高精度解析を行う」(東大生産技術研究所の加藤千幸教授)予定だ。
さらに、大規模シミュレーションによって「思考する」脳型の神経回路を再現し、人工知能(AI)へ応用するといった挑戦的なテーマも掲げている。これらを含む四つの萌芽(ほうが)的課題は今後、実施機関を選定する。
(文=藤木信穂)
<全文は日刊工業新聞電子版に会員登録して頂くとお読みになれます>
アプリケーションの開発として重点的に取り組むのは、医療、防災、エネルギー、モノづくり、宇宙分野における九つのテーマ。特に防災分野では、地震や津波による複合災害の予測を目指す。4月に発生した熊本地震のように、強い地震が立て続けに起こった場合、観測値を超える巨大な地震動(地震によって発生する揺れ)が生じる可能性がある。
4月26日に文科省で開かれた京の評価委員会の冒頭で、理化学研究所・計算科学研究機構の平尾公彦機構長は、熊本地震を受けて、京を使って「観測を超える強い地震動(強震動)の計算に着手した」ことを明らかにした。
ポスト京ではさらに、精緻な都市モデルを使い、地震発生時の建物の損壊や人の流れに加え、社会基盤の損害状況なども考慮した現実的な防災計画をシミュレーションする。東京大学地震研究所の堀宗朗教授は「首都直下地震や南海トラフ地震を想定し、地震の被害が経済にどのような影響を及ぼすかまで予測する」と話す。
新薬開発の期間短縮やコスト削減効果が見込める、創薬分野での期待も大きい。京では、たんぱく質やDNAの動きはマイクロ秒(マイクロは100万分の1)単位でしか再現できなかったが、ポスト京ならミリ秒単位で解析できる。理研生命システム研究センターの奥野恭史客員主管研究員は「薬作りの発想が変わる。10年後に薬ができたときのリターンは強烈なものになる」と見通す。
産業競争力を強化するモノづくり分野では、デバイスと材料開発の領域で大規模な計算を行い、データ科学の手法を使って次世代の磁石材料などを探索する。設計・製造プロセスの開発では、「京ではできなかった航空機の実スケールの高精度解析を行う」(東大生産技術研究所の加藤千幸教授)予定だ。
さらに、大規模シミュレーションによって「思考する」脳型の神経回路を再現し、人工知能(AI)へ応用するといった挑戦的なテーマも掲げている。これらを含む四つの萌芽(ほうが)的課題は今後、実施機関を選定する。
(文=藤木信穂)
<全文は日刊工業新聞電子版に会員登録して頂くとお読みになれます>
日刊工業新聞2016年5月4日