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窓の外を眺めるだけじゃない!本格アートで進化する観光列車

窓の外を眺めるだけじゃない!本格アートで進化する観光列車

JR東の現美新幹線

 JR九州が火を付け、ここ数年、全国で増え続けている観光列車のコンセプトが変わりつつある。JR東日本は4月29日から上越新幹線の越後湯沢―新潟間に現代アートがテーマの観光列車「現美新幹線」を運行。JR西日本が4月から運行している観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」は、途中の駅でアート作品を楽しめる。観光列車と言えばこれまで、車窓の景色を眺めるものがほとんどだった。だが、人気が定着し各地で観光列車が走る中で、これまでと違った魅力を打ち出すものも増えてきそうだ。

JR東日本 新幹線で現代アート


 現美新幹線は時速210キロメートルと高速で移動する新幹線の中で、車内を彩るアートを楽しむのがコンセプト。車窓は新進気鋭の若手現代アーティストによる作品で覆われ、乗車中、列車の外を見ることはほとんどない。

 11―16号車の6両編成。各車両には、7組のアーティストによる作品が飾られている。7組は絵画や彫刻、写真、映像など、同じアートでも分野が異なっており、それぞれのアーティストが車両ごとに全く違う世界観を作り上げる。次はどのようなアートと出会えるのか、わくわくしながら車両を移るのが、現美新幹線の最大の魅力だ。

 先頭車両の11号車は指定席で、唯一、通常の列車のように、シートが置かれた車両となっている。この車両のアートを担当した絵画のアーティスト、松本尚さんは、「動く空間をプロデュースしたのは初めてだった」と話す。電車ならではの光の変化を生かして、シートやカーテンなどをデザイン。新幹線がトンネルから出た瞬間の車両全体の雰囲気の変化は圧巻だ。


JR西日本 旅情誘うデザイン


 一方、JR西日本のラ・マル・ド・ボァは、フランス語で「木製の旅行かばん」を意味する。車両デザインは瀬戸内の島々を舞台に毎年開催している「瀬戸内国際芸術祭」の総合ディレクターの北川フラムさんが監修。外装は白い車両に黒い太線で車窓をかばんのように見立たてて描き、旅情を誘うデザインになっている。

 ラ・マル・ド・ボァは、JRグループが4月から実施している観光PR事業「晴れの国おかやまデスティネーションキャンペーン」に合わせて投入され、宇野線の岡山―宇野間を運行する。サイクリングの人気が高まり、瀬戸大橋を自転車で渡るなど、周辺を自転車で巡る人が増えていることを受け、自転車を収納できるサイクルスペースを設けているのも特徴。最大8台をそのまま載せられる。

 途中の八浜駅には、イタリアのアート作家エステル・ストッカー氏がデザインした駅アートを設置。列車に合わせ、ホームは白と黒で構成されたデザイン。列車がやってくると、駅と列車のコラボレーションが楽しめる。終点の宇野駅も駅舎をストッカー氏のデザインにリニューアル。いずれも2016年の瀬戸内国際芸術祭の出展作品で、アートを強く打ち出した列車になっている。

 JR東日本の冨田哲郎社長は新幹線とアートのコラボレーションについて、「アートと鉄道は関心をもっている層が違う。鉄道好きでない人が列車に乗るきっかけにしたい」と話す。JR東日本、JR西日本ともに、観光列車に新たなコンセプトを取り入れ、若い女性などを対象に鉄道のすそ野を広げる。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2016年5月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
元”撮り鉄&乗り鉄”からすると、新幹線の車窓を塞ぐのは禁じ手とも思えますが、こうした斬新な発想で新たな顧客が生まれれば、成功と言えるでしょう。        

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