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1―3月期「実質0%台」が大勢。消費税と関係なく日本の潜在成長率はこの程度

シンクタンクGDP予想。増税凍結より本格的な規制緩和を
 内閣府が18日に発表する2016年1―3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0%台(年率換算)の低い成長率にとどまる見通しが強まった。主要シンクタンクの予測によるもので、うるう年でなければマイナス成長だったとの分析もある。足元では円高・株安、さらに熊本地震が日本経済に及ぼす影響も懸念される。安倍晋三首相が17年度の消費増税延期を決断する環境が整いつつあるとみられる。

停滞脱せず


 主要シンクタンク8社のうち6社が年率換算で0%台、2社が1%台の成長率を予測。各社とも2四半期ぶりのプラス成長を見込むが、「プラス成長とマイナス成長を繰り返す停滞局面から脱していない」(伊藤忠経済研究所)、「1―3月期は景気が依然踊り場だったことを確認する内容」(みずほ総合研究所)と厳しく分析する。

またニッセイ基礎研究所は「1―3月期の成長率は、うるう年の影響で前期比年率1%程度押し上げられた。この影響を除けばマイナス成長と考えられる」とし、第一生命経済研究所も「(うるう年効果を除けば)ほぼゼロ成長」と指摘する。

設備投資は慎重


 各社ともGDPの約6割を占める個人消費は2四半期ぶりにプラス成長に転じると予測する。だが「実勢は停滞感の強い状況が持続」(日本総合研究所)と分析。16年春闘での賃上げ率も前年を下回る見通しのほか、「原油価格が上昇に転じた結果、実質賃金の増加ペースが鈍化するとみられることも消費を抑える要因」(大和総研)と見通す。

 もう一つの焦点の設備投資も、3四半期ぶりに減少すると予測。「海外経済の先行き不安や円高・株安を受け、企業の投資に対する姿勢はやや慎重化している」(日本総研)と指摘する。

足元は円高・株安の逆風


 足元は円高・株安の“逆風”が吹く。日銀は先週の金融政策決定会合で追加緩和を見送り、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも政策金利の引き上げは見送られた。日米の金利差が拡大するとの市場観測が裏切られた影響が大きい。また米財務省は為替政策の監視対象国に日本を指定しており、円買い圧力はしばらく終息しそうにない。

 他方、日本政府は今秋にも緊急経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成することを視野に入れるが「数兆円の景気対策を実施しても、“焼け石に水”」とみる機関投資家もいる。安倍首相は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前後に17年度の消費増税延期の是非を決断するとみられるが、市場は増税延期をすでに織り込みつつある。
(文=神崎正樹)
日刊工業新聞2016年5月4日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
うるう年要因がなければマイナス成長。最近の景気ウォッチャー調査でも景況感は改善しておらず、日銀のマイナス金利導入は今のところ効いていない。8%への消費税増税が景気を後退させたとの見方もあり、来年の10%への再引き上げを延期すべきとの声が否応なく高まるが、前回の引き上げからこれだけの時を経ても成長率が上がらないということは、消費税とは関係なく、そもそも日本の潜在成長率はこの程度のものだったのではないか。消費税増税凍結より、潜在成長率を引き上げる本格的な規制緩和に舵を切るべきではないか。

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