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迫る伊勢志摩サミット。財政出動、足並みそろうか

円高是正は難しく
迫る伊勢志摩サミット。財政出動、足並みそろうか

伊勢志摩サミットが開かれる三重県志摩市の賢島

 伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)開催(5月26、27の両日)まで1カ月を切った。8年ぶりの日本開催となる今回のサミットは、世界経済の減速懸念に主要7カ国(G7)がどこまで政策協調できるかが最大の焦点だ。G7各国が財政出動を伴う内需拡大で歩調を合わせ、新興国に代わって世界経済をけん引することが期待される。だが各国間には複雑な思惑が絡み合っているだけに、世界経済の“潮目”を変えるのは容易ではない。

独は“三重苦”


 「財政的にはドイツが(G7の中で)一番余裕があると思う。財政出動に関して協調していくためのアイデアを伺いたい」。

 安倍晋三首相は3月下旬、日本を訪れたノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授にこう尋ねた。財政余力のあるドイツや英国を説得し、サミット議長国としてリーダーシップを発揮したい首相の思惑がのぞく。

 ドイツは先進国で唯一、財政収支が黒字だが景気刺激のための財政出動には消極的だ。ドイツの輸出依存度が高い中国の経済減速、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制不正問題、難民受け入れの“三重苦”を抱える。財政の“優等生”といえどもこれら懸案に優先して取り組む必要があり、追加の財政出動に動きにくい。

 英国は欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票を6月に控える。保守党は緊縮財政を掲げており、新たな財政出動はEU離脱をめぐる党内の足並みを乱すリスクになりかねない。

円高がネックに。金融政策に手詰まり感


 伊勢志摩サミットは米ワシントンで開かれた先の主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)の共同声明を踏まえ、財政・金融・構造改革の政策協調をどこまで拡大できるかが焦点。その背景には日欧の金融政策の手詰まり感がある。

 今回のサミットで財政出動の有効性については参加各国から一定の合意を得られるとみられる。ただ各国による実効性は見通しにくい。

 中でもユーロ圏は「景気刺激が難民対策やテロ対策以上に重要な課題だとみなす政治家は少数派だろう。(伊勢志摩サミットは)かけ声倒れに終わりかねない」(大和総研)との見方が少なくない。

 日本の課題は回復力が弱い景気の浮揚。熊本地震の被災地の復旧・復興を急ぎつつ、緊急経済対策を盛り込んだ2016年度の第2次補正予算案編成や17年度の消費増税延期を視野に入れる。

 だが日本経済の足元は円高に見舞われ、財政政策だけでは対応できない。米財務省は為替政策の監視対象国に日本を指定し、日本のドル買い介入をけん制しており、サミットでの円高是正は難しい。政権はサミット後に経済財政運営の正念場を迎えることになる。
(文=神崎正樹)
日刊工業新聞2016年5月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
円高は100円あたりまで進んでもおかしくない。議長国のリーダーシップと言われても・・・。

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