中国企業がボンバルディアの鉄道部門買収交渉―日立は動くのか?
中西会長、東原社長のツートップに訪問先の米国でインタビュー
日立製作所が米国ラスベガスでビジネスイベントを開催、日刊工業新聞の日立担当の敷田編集委員が同行取材に出向いて、中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)、東原敏昭社長兼(COO)にそれぞれインタビューしている。
そんな折、日立にとっては気になるニュースが飛び込んできた。カナダの重工大手ボンバルディア が鉄道事業の経営権を、中国の2大鉄道車両メーカーに売却する方向で交渉していると、ロイター通信が報じた。今後、鉄道事業を成長の大きな柱に据えている日立にとって、交渉が実現すると成長戦略に大きく影響する。ボンバルディアは世界の「鉄道ビッグスリー」の一角だが、航空機部門向けの資金を手当てするため、鉄道車両・信号制御機事業を含む輸送部門の全体もしくは一部の売却を検討しているという。
ロイター通信によると、交渉を行っているのは、中国北車 と中国南車 。両社は現在、来月の合併に向け手続きを進めており、合併が完了するまで交渉は次の段階に進めない状態になっているとしている、としている。
日立はこの件に関して動くのか。中西会長はインタビューで鉄道事業への言及という意味ではないが、「必要な技術やカスタマーベース(顧客基盤)を得るためM&Aは続けていく」と話している。日立は2015年3月期も営業利益が過去最高益を更新する見通しで、メディアでは「電機業界の勝ち組」と持ち上げられている。ただ実態は、それほど楽観できるものではないことを、以前から中西会長はことあるごとに指摘してきた。中西会長や東原社長からたびたび出る「フロント」という言葉。海外顧客の最前線における営業力やエンジニアリング力がインフラ事業で弱いという意味だ。
今年4月の役員人事で、鉄道部門のトップであるアリステア・ドーマー交通システム事業グローバルCEOが、外国人としては初めて日立本体の役員に就任した。海外のM&A案件は、ドーマー氏主導で進められているが、もともと軍人出身だけあって、社内でもギリギリまで情報が漏れてこないという。ボンバルディアの鉄道子会社は現在、ドイツに本社があるが、北米などの事業で受注実績も多い。英国を皮切りに鉄道事業を欧州に広げていこうとしている日立。中西、東原、ドーマーの「鉄道マネジメントチーム」はどのような判断を下すか注目だ。
<インタビュー・中西宏明会長>
―4月に米州や中国など海外4地域に総代表を置き、強い権限を与えました。その狙いは。
「経営の意思決定を(総代表に)渡し、投資と回収ができる仕組みにした。市場に密着しないと、社会イノベーション事業を組織立てて展開できないと感じたからだ」
―2015年度に営業利益率を7%にする経営計画を進めています。
「利益率を年1ポイントずつ上げるのは簡単ではないが(達成は)見えてきた。中国では建機が苦戦するが、それ以外は堅調だ。米国ではエンジンをかけ始めた。どこまでいけるか期待している」
―今後の課題は。
「事業構成(ポートフォリオ)を整理したつもりだが、まだ分かりにくい。外部の関係者から見て、分かりやすく力強いものに組み替える」
―M&A(合併・買収)戦略への考え方について。
「フロントエンジニアリングやファイナンスプランニングなどジクソーパズルの足りないパーツがある。必要な技術やカスタマーベース(顧客基盤)を得るためM&Aは続けていく」
<インタビュー・東原敏昭社長>
―社長に就任して1年が経過しました。
「毎日が課題。責任の重さがよく分かった。また、グループ会社の課題を理解し、全体感もつかめた。現経営計画の達成に向けて努力し、その先の日立を形作る」
―16―18年度の次期経営計画の考え方を教えてください。
「課題はキャッシュ(の創出力)。次期計画では、投下資金の回収期間を示す『キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)』にこだわる。また、日本市場は電力自由化やマイナンバー(社会保障・税番号)制度に伴う事業が創出され、魅力的になる。国内売上高は約5兆円だが(狙える)市場は大きくなる」
―事業ポートフォリオの見直しの考えは。
「情報通信関係と連携することで価値が上がる事業は(日立の中核領域に)近づける。コモディティー(汎用品)で、小回りの良い事業は遠ざけた方がよい。GEなど海外勢は大胆に再編している。将来は日立もその方向に行きつつ、日本市場を伸ばすために(事業を)大事にしたい」
そんな折、日立にとっては気になるニュースが飛び込んできた。カナダの重工大手ボンバルディア が鉄道事業の経営権を、中国の2大鉄道車両メーカーに売却する方向で交渉していると、ロイター通信が報じた。今後、鉄道事業を成長の大きな柱に据えている日立にとって、交渉が実現すると成長戦略に大きく影響する。ボンバルディアは世界の「鉄道ビッグスリー」の一角だが、航空機部門向けの資金を手当てするため、鉄道車両・信号制御機事業を含む輸送部門の全体もしくは一部の売却を検討しているという。
ロイター通信によると、交渉を行っているのは、中国北車 と中国南車 。両社は現在、来月の合併に向け手続きを進めており、合併が完了するまで交渉は次の段階に進めない状態になっているとしている、としている。
日立はこの件に関して動くのか。中西会長はインタビューで鉄道事業への言及という意味ではないが、「必要な技術やカスタマーベース(顧客基盤)を得るためM&Aは続けていく」と話している。日立は2015年3月期も営業利益が過去最高益を更新する見通しで、メディアでは「電機業界の勝ち組」と持ち上げられている。ただ実態は、それほど楽観できるものではないことを、以前から中西会長はことあるごとに指摘してきた。中西会長や東原社長からたびたび出る「フロント」という言葉。海外顧客の最前線における営業力やエンジニアリング力がインフラ事業で弱いという意味だ。
今年4月の役員人事で、鉄道部門のトップであるアリステア・ドーマー交通システム事業グローバルCEOが、外国人としては初めて日立本体の役員に就任した。海外のM&A案件は、ドーマー氏主導で進められているが、もともと軍人出身だけあって、社内でもギリギリまで情報が漏れてこないという。ボンバルディアの鉄道子会社は現在、ドイツに本社があるが、北米などの事業で受注実績も多い。英国を皮切りに鉄道事業を欧州に広げていこうとしている日立。中西、東原、ドーマーの「鉄道マネジメントチーム」はどのような判断を下すか注目だ。
<インタビュー・中西宏明会長>
―4月に米州や中国など海外4地域に総代表を置き、強い権限を与えました。その狙いは。
「経営の意思決定を(総代表に)渡し、投資と回収ができる仕組みにした。市場に密着しないと、社会イノベーション事業を組織立てて展開できないと感じたからだ」
―2015年度に営業利益率を7%にする経営計画を進めています。
「利益率を年1ポイントずつ上げるのは簡単ではないが(達成は)見えてきた。中国では建機が苦戦するが、それ以外は堅調だ。米国ではエンジンをかけ始めた。どこまでいけるか期待している」
―今後の課題は。
「事業構成(ポートフォリオ)を整理したつもりだが、まだ分かりにくい。外部の関係者から見て、分かりやすく力強いものに組み替える」
―M&A(合併・買収)戦略への考え方について。
「フロントエンジニアリングやファイナンスプランニングなどジクソーパズルの足りないパーツがある。必要な技術やカスタマーベース(顧客基盤)を得るためM&Aは続けていく」
<インタビュー・東原敏昭社長>
―社長に就任して1年が経過しました。
「毎日が課題。責任の重さがよく分かった。また、グループ会社の課題を理解し、全体感もつかめた。現経営計画の達成に向けて努力し、その先の日立を形作る」
―16―18年度の次期経営計画の考え方を教えてください。
「課題はキャッシュ(の創出力)。次期計画では、投下資金の回収期間を示す『キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)』にこだわる。また、日本市場は電力自由化やマイナンバー(社会保障・税番号)制度に伴う事業が創出され、魅力的になる。国内売上高は約5兆円だが(狙える)市場は大きくなる」
―事業ポートフォリオの見直しの考えは。
「情報通信関係と連携することで価値が上がる事業は(日立の中核領域に)近づける。コモディティー(汎用品)で、小回りの良い事業は遠ざけた方がよい。GEなど海外勢は大胆に再編している。将来は日立もその方向に行きつつ、日本市場を伸ばすために(事業を)大事にしたい」
日刊工業新聞2015年04月30日最終面を元に加筆