陸上で魚を養殖するプラント、キッツが閉鎖循環型を事業化へ

水浄化技術を活用、付加価値の高いEPC案件に

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茅野工場に設置したマダイ養殖プラント
 キッツは2016年度中に、魚養殖プラントの事業化に乗り出す。閉鎖循環型の陸上養殖システムの開発を進めており、天候を問わない安定生産が可能な点などを訴求する。15年3月には茅野工場(長野県茅野市)内にマダイの養殖プラントを設置し、養殖技術や運用ノウハウの蓄積にまい進。プラントの自動制御や遠隔システムといった先端技術をテコに、ビジネス化への動きを加速する。

汚染など海上養殖に課題


 国際的な水産市場では、需要の高まりや天然資源の不足から、世界市場に出回る魚の約半数を養殖魚が占めるという。いけすを用いた海上養殖では、海洋汚染や台風・赤潮など自然災害の回避や安定生産が課題だ。

 キッツは工業用バルブや流体制御用機器で培った水浄化技術を活用した。茅野工場では2台の水槽で計67匹のマダイを飼育。飼育開始時は170グラムほどだったが、現在1キログラム弱まで成長し、順調に飼育を継続している。岡田毅史経営企画本部事業開発部長は「マダイ養殖で100日以上とされる成功目安をクリアした」と胸を張る。

魚から排出されるアンモニアの無害化がカギ


 長期養殖は魚から排出されるアンモニアをいかに無害化するかがポイント。キッツは化学反応性の高いラジカル(遊離基)をアンモニアと反応させ、無害の窒素への転換を達成した。

 プラント運営管理でもセンサー類を用いた自動制御や遠隔監視、非常時の警報システムなどを完成。水素イオン濃度(pH)や水温、酸素濃度などを定期的に計測し、数値に変化が起これば、管理者に電子メールを送信する機能もつけた。

市場規模は約5000億円もさらに拡大へ


 閉鎖循環型の陸上養殖は安定生産に加え、消費地で鮮度の高い魚介類の提供やトレーサビリティー(履歴管理)の徹底にも優れる。「利便性向上にこだわった。生産者・消費者ともにメリットが大きい」と、岡田部長は力を込める。

 キッツは50年度に陸上養殖プラントの市場規模を約5000億円と予想する。人口増加などに伴い今後も養殖需要は拡大する見通しで、同社はエンジニアリング技術や参入企業へのコンサルティングなどを展開していく。
(文=長塚崇寛)

日刊工業新聞2016年4月25日

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長塚崇寛
名古屋支社編集部
編集委員

天候に左右されない完全閉鎖型の魚養殖プラント。安定した供給体制を構築できるほか、品質管理やトレーサビリティーといった食の安全の担保につながる。新興国を中心とした人口増加に伴う食糧需要の拡大に威力を発揮しそう。同時にプラント向けバルブを主力とするキッツにも、付加価値の高いプラントのEPC(設計・調達・建設)事業への参入機会となる。

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