電子部品大手、業績失速。スマホ向け「台数動向が見えない」

環境激変。生き残るメーカーは一握りか

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 電子部品5社の2016年3月期連結決算は、スマートフォン市場の成長鈍化に伴い、減速傾向が強まってきた。米アップルが16年1―3月に販売不振や減産に陥り、京セラやアルプス電気の営業利益が下振れた。業績が好調だった村田製作所やTDKも17年3月期は減益を見通す。各社はスマホ市場が堅調な間に、車載機器やエネルギーなど新分野の育成を急ぐ。

 TDKは16年3月期で大幅増益を達成したが、16年1―3月期は「高周波部品などで北米のスマホ生産調整が響いた」(上釜健宏社長)。17年3月期のスマホ市場は大きな成長が見込めないが「中国の高価格帯スマホ向けに部品点数が増えるほか、新製品にも期待できる」(同)と見る。

 村田製作所は中華圏のスマホ向け表面弾性波(SAW)フィルターなどが伸びた。村田恒夫社長は「1台当たりの部品点数が増え、堅調に推移した」と説明する。一方、17年3月期はスマホ向けの売上高の伸び率は2%と、前期の30%に比べ大幅減を予想する。

 京セラは16年3月期の計画達成率が90%にとどまった。スマホ市場の失速は「4―6月期も大きくは変わらない」(山口悟郎社長)。しかし部品点数の増加をテコに「17年3月期は前期比14―15%で伸ばしたい」(同)。

 アルプス電気の17年3月期は減収減益を予想。ただスマホ向け事業の売上高はカメラ用アクチュエーターやスイッチがけん引し、前期比0・8%増の1880億円を見込む。「台数動向が見えない」(栗山年弘社長)が、新製品に期待する。

 日本電産もスマホ市場の減産を受け大幅に受注が減少。触覚部品「ハプティック」が落ち込み、16年1―3月期に設備の減損や不稼働損失で65億円を計上した。ただ「スマホ市場全体がピークアウトした訳ではない。4月からは次のモデルで取り返す」(永守重信会長兼社長)。車載用部品事業を軸に4期連続の最高益を目指す。

TDK社長交代、上釜氏は代表権のある会長に


 TDKは28日、石黒成直常務執行役員(58)が社長に昇格する人事を発表した。上釜健宏社長(58)は、「成長路線に向け、スピードを持って実行に移す時」と、就任10年を節目にバトンタッチを決めた。上釜社長は代表権のある会長に就き、ガバナンス体制の強化に取り組む。6月29日の株主総会後の取締役会を経て就任する。

 一層のグローバル成長を目指す中、石黒次期社長は豊富な海外経験が選任の決め手となった。主力の磁気ヘッド事業での貢献も大きく、自動車向け磁気センサーを手がけるミクロナス(スイス)買収の立役者でもある。TDKはヘッド技術を自動車用センサーに横展開し、新しい柱へ育成する考えで、次期社長の手腕が試される。上釜社長は電子部品事業の回復や米クアルコムとの合弁会社設立など成長の道筋をつけた。
【略歴】
石黒成直氏(いしぐろ・しげなお)81年(昭56)北大理中退。82年TDK入社。14年執行役員、15年常務執行役員。東京都出身。

日刊工業新聞2016年4月29日

COMMENT

尾本憲由
秘書部
部長

iPhone失速は電子部品を取り巻く環境を大きく変えそうだ。低価格スマホの台頭は、このままパソコンのようにコモディティー化を急速に進ませることになるのだろうか?その時に電子部品各社はどのような立場に置かれることになるのだろうか?どちらにしてもスマホ市場がなくなるわけでなく、IoT時代を前にボリュームは拡大を続けるはず。その中で生き残ることができるのは、一握りのグローバル企業に限られる。

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