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デニムのダメージ加工は、匠の技によって生み出され続けている

豊和・本社企画開発課係長・岡本恭平さん
 1978年、デニムを使い込んだかのように加工する「ストーンウォッシュ」を確立しこの分野のパイオニアとなった豊和(岡山県倉敷市、田代豊雄社長、086・477・6060)。その後も数々の独自技術を生み出し、新進のアパレルブランドから日本を代表するジーンズメーカーまでの幅広い顧客層に提供し続けている。

 岡本恭平さん(35)の仕事は、その加工技術の開発。ウォッシュやシェービング、サンドブラストなどの既存技術を組み合わせたり、また全く新しい方法を試したりしながら、どのアプローチが顧客のイメージを最も再現できるかを追求する。同時にコストや生産性、環境対応などの要素も徹底して検討し最終的に職人たちが製品に施す工程を決定する。

 デニム加工といえば近年、ヤスリなどを使った手作業の注目度が高い。無論それらは大切な工程ではあるものの、全体の一部に過ぎない。例えば人気のビンテージ調パンツでは太腿付け根が白く色落ちした“ヒゲ”がおなじみだが、「デニムはこするだけでは白くならない」(岡本さん)ため、薬品による脱色など他工程との組み合わせが欠かせない。

 特に日本では品質や微妙な表現へのこだわりが強い。岡本さんは大学で化学を専攻した知識を生かし、染料や薬品だけでも100種類あまりを使い分ける。これは同社の米国子会社が用意する数の倍近い。また、複雑な色落ちや模様を実現するためロボットやレーザー加工機まで駆使して理想を具現化する。

 ただ知恵を絞り試作を繰り返して編み出した加工法も、いったん製品化すればすぐにスタンダードとなり、また一からの開発だ。縁の下の力持ちを絵に描いたような毎日だが、若きデニムの達人は休むことなく次世代の加工法に挑み続ける。
(文=岡山支局長・浅田一朗)
日刊工業新聞2016年4月27日 機械・航空機 1面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
デニムの加工に、こんなにも細かくたくさんの種類があるとは知りませんでした。色落ちしていないデニムを買って履きつぶしてみても、なかなか売っているような「いい感じ」の色落ちやダメージにならないわけです。 今度デニムを選ぶときは、「この加工はいったいどうやってされたのか」と想像してみるのもいいかもしれません。

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