サイバーダインの「HAL医療用」、診療報酬実質2.5倍超に見直し

 厚生労働省はサイバーダインの装着型ロボット「HAL医療用」の診療報酬を実質で2・5倍以上に見直した。HALによる治療の報酬は変更せず、処置料などを追加で認めて報酬総額を引き上げた。厳しい財政状況の中であっても厚労省はイノベーションに対価を認めた。後に続く医療系ベンチャーの背中を押す施策になりそうだ。

 HALは脳が手足を動かそうとする生体電位信号を読み取り、筋肉の代わりに手足を動かす。神経筋疾患の治療に認められた日本初の医療ロボだ。内閣府と文部科学省、経済産業省、厚労省が連携して実用化を後押ししてきた。だが厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会が2月に、ドイツでの治療費に比べて約3分の1の値を付けていた。

 医療機関への報酬が減れば、HALのレンタル料などメーカーの取り分も低くなる。そこで装着条件探しなどの処置料として実質的に加算した。初回治療が最大8万5100円、2―9回目が最大6万8600円、10回目以降は最大4万9600円と、治療60回分では2・5倍以上になった。厚労省が都道府県などに診療報酬の解釈を説明する事務連絡通知の中で表明した。

 先進国では新しい治療の価格を決める際に海外の価格を互いに参照する。そのため高い対価を認めやすい米国でまず実用化し、他国での価格交渉に挑むことが多かった。メーカーにとっては日本の開発を先行させてもメリットが少ない。厚労省が医療費圧縮だけでなく、対価を認める方向性を打ち出したことは後続のベンチャーにとって追い風になる。

「HAL医療用」の診療報酬点数が適正かは議論が重ねられていた


HALの“価値”に波紋―問われるイノベーションの対価
http://newswitch.jp/p/3813

日刊工業新聞2016年4月27日 機械・航空機 1面

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
04月28日
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HALの寸法調整や脳血管リハなどの点数を積み上げ診療報酬を増やしました。次の改定で新しい枠をつくらないと、実質加算は恒久化しないと思います。事務連絡に明記された部分が限られるため、保険の審査支払機関の担当者が特例を忘れてしまえば、診療報酬明細をみても「なぜこんな申請が?」となってしまいます。一方、医療費削減に頭を悩ませてきた厚労省が新しい治療に対価を認めたことはインパクトが大きいです。ベンチャーに限らず製薬会社や医療機器メーカーなら、「うちも認めて」となります。この評価はとても難しく、評価自体にコストがかかります。厚労省が導入しようとしている費用対効果評価への協力を交換条件にして、イノベーションの価値を治療後も追跡させて示し続ける仕組みにしたら良いと思います。そうすればコスパの悪い治療が、企業の営業力だけで長く続くことを防げると思います。(日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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