東芝の次期社長が確実な綱川氏は「自強不息」の人

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東芝メディカル社長時代の綱川氏
 東芝は室町正志社長(66)の後任に綱川智副社長(60)を昇格させる方向で調整に入った。同社の指名委員会(委員長=小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長)が大型連休明けに会合を開き、決定する見通し。6月下旬の株主総会後に就任する予定だ。室町氏は事業売却や人員削減などを進め、構造改革に一定のめどをつけた。成長回帰に向け、足場ができたタイミングで経営体制を刷新し、再建を急ぐ。

 綱川氏は東芝メディカルシステムズ社長を経て、2015年には東芝副社長に就き経営企画部門を担当。一連の構造改革では東芝メディカルシステムズや、家電子会社の東芝ライフスタイルの売却交渉で手腕を発揮した。

 東芝は不適切会計を受け、田中久雄前社長が15年7月に辞任した。会長だった室町氏が急きょ社長に就いたが、同トップ体制は一時的なものと見られていた。室町氏の処遇については、現在、指名委員会などが調整している。

 綱川氏とはどんな人物か。社長を約4年間務めた東芝メディカルシステムズ時代の主な発言をひろってみた。

東芝メディカル社長就任時「一人ひとりが変わらねば」


 一貫して東芝グループの医用システム事業に携わってきた。営業や企画部門などを経験し、その半分は米国、欧州などの駐在だった。フランクな人柄。社長就任後、「一人ひとりが変わらねば」と呼びかけた。

 「内向きの仕事を捨てて顧客に向いた行動を取り、判断・決断・実行のサイクルを迅速化したい。米国子会社時代にスピーチの重要性を学んだ。相手を鼓舞させるのも落胆させるのも、内容と役者次第だと思い知った」

 帚木蓬生(ははきぎほうせい)の小説をよく読む。好きな言葉は「自強不息」。ミスターチルドレンの曲でストレスを発散。「娘、息子とは趣味が違う」と笑う。

従業員に「本当は『ありがとう』と言ってあげたい」


 「従業員に語りかける時、言葉選びに苦労する」と打ち明けるのは東芝メディカルシステムズ社長の綱川智さん。経営トップの言葉の重さを自覚する。

 年頭あいさつの内容もあれやこれや。「厳しい事業環境には危機感を持ってほしいが、そればかりを強調すると萎縮してしまう。しかし、明るい話ばかりでは、緊張感がなくなる」と熟考した。

 「あえて口にはしないが、本当は『ありがとう』と言ってあげたい時も多い」とぽつり。笑顔を絶やさず、親しみやすい人柄。従業員思いの経営者であることが、にじみ出ている。

テルモの新宅社長とは東大の同級生


 「テルモの新宅君は同級生」と笑顔をみせるのは東芝メディカルシステムズ社長の綱川智さん。テルモ社長の新宅祐太郎さんは東京大学教養学部の学友だった。

 自身の学生生活については「あまり思い出がない。4年間、何をしていたのだろう」と天井を見つめる。ところが、新宅さんについては「秀才。将来は官僚になると思っていた」と滑らか。

 時はたち、両氏とも医療機器メーカーを代表する立場になった。「それぞれ米国法人の社長を務め、本社のトップになったのも同じ2010年だった」と、不思議な縁に感慨深い様子。

マンUスポンサーに「業界ナンバーワンになる野心がある」


 「イングランドのサッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドFCからスポンサーにならないかと提案され、協賛契約を結んだ」と語るのは、東芝メディカルシステムズ社長の綱川智さん。

 クラブのトレーニング施設に医療機器を提供する。「コンピューター断層撮影装置や磁気共鳴断層撮影装置といった最新機器で選手をサポートしたい」と意気込む。

 スポンサーに選ばれた理由は「革新性があり、業界ナンバーワンになる野心があることが選定基準だと言われた」という。高い評価を受けた主力製品の“移籍”に満面の笑みを浮かべる。
【略歴】
1979年(昭54)東大教養卒、同年東京芝浦電気(現東芝)入社。04年東芝アメリカメディカルシステム社社長、08年東芝メディカルシステムズ取締役常務、09年同上席常務、10年社長。14年東芝執行役上席常務、15年取締役代表執行役副社長。東京都出身。60歳

日刊工業新聞2016年4月25日付記事に加筆

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

室町社長の後任を考えた時に、なかなか外部から招聘するのは難しい(引き受け手もいない)。まだ会社の混乱期に常務クラスの若手から抜擢するのも安定性に欠く。3人の副社長から選ぶのがひとまず順当だろうが、志賀氏はWHの会長などを務め、課題を抱える原子力事業の当事者で最初から可能性は低い。成毛氏は稼ぎ頭の半導体出身(室町社長も)だが、半導体も不正会計の舞台の一つなっており監督責任もある。綱川氏は副社長の中で、唯一取締役も兼務しており、最も無難な線でもある。

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