デンソーが10年以上温めたIoTを世界展開。社長!ドイツと何が違いますか?

<追記あり>生産性3割向上。有馬社長「現場力引き出す」

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インタビューに応えるデンソーの有馬浩二社長
 デンソーは2020年をめどに世界全130工場にIoT(モノのインターネット)を導入する。生産性30%向上を目指す。工場だけでなく生産準備部門にも導入し、その後は仕入れ先も“つなぐ”範囲に加える。IoTはドイツ勢、米国勢が先行する。デンソーは両者の進んだ技術を取り入れつつ「人の知恵を引き出す」(有馬浩二社長)ことで特徴を出す考え。

 デンソーは現時点でのIoTの取り組みについて「(欧米勢と比較して)遅れている」(山崎康彦常務役員)との認識を示した。

 IoT活用により、まず「QCDの観点で今までとは違うレベルに上げる」(同)。生産設備の突発故障や製品不良を限りなくゼロに近づける。また、つくる製品が違う工場間でも「カイゼン」の情報共有ができカイゼンの質や量の向上につながる。

 導入に当たっては日本の本社だけでなく欧州と米国でも専門チームを発足し、ドイツや米国のベンダーとも組んで進める。まず16年度末をめどにモデルケースとして同じ製品を生産する国内2工場と北米1工場をつなぎ、メリットや課題を洗い出す。18年には全130工場をつなぎ、20年には実際にメリットが出る体制を構築する考え。

 「この規模でつなげるのは世界でも例がないのでは」(同)という。並行して生産準備部門もつなげる。「理想は製品図面から設備図面が勝手にできること」(同)とし人の介在を省く。一連のIoT導入にかかる投資額は「巨額になると思うが試算中」(同)とした。

 仕入れ先の導入については「負荷にならないように進める」(同)考え。デンソーのIoTは人をいかに生かすかを特徴とする。「モノづくりを知る人」が今まで見えなかった有益な情報を得ることでより質の高いカイゼンや革新につなげる。

有馬社長は「人の知恵、引き出す体制を」


 生産技術畑が長く、15年の社長就任までIoT導入の陣頭指揮も執ってきた有馬浩二社長に聞いた。
 ―IoT導入の構想はいつから始まっていましたか。
 「十数年前。最近は当時と違い情報ツールが使いやすくなり、安く手に入るようになったことで、すごい勢いで(導入が)加速する環境になった」

 ―導入の目的は。
 「世界各地の拠点が本当の意味で連携するには、リアルな情報を把握し加工・分析してアウトプットすることが大事。生産性が上がれば従業員の負荷も減り、より有効に知恵を出せる時間が捻出できる。すると、もっと高いレベルの工場、会社になれる可能がある」

 ―デンソーならではのIoTとは。
 「当社のみならず日本メーカーで製造現場が強いのは、人の力によるところが大きい。ドイツ勢が進めるIoTは、そうした現場力を引き出せる道具に仕立て上げられていない。人の知恵を引き出す仕組みをセットでIoTに入れ込むのが日本のモノづくりのあり方で、当社もそこで特徴を出していきたい」
(聞き手=伊藤研二)

記者ファシリテーターの見方


 取材に同席しました。10数年前から構想を温めていたことは意外でした。有馬社長は「彼ら(ドイツ人)には反論されるかもしれないが」としつつ、日独の現場力の違いを強調していました。デンソーは世界中に「強い生産現場」を持っていて、それがIoTによってさらに強化される、という視点です。今後は、これまでのように「ドイツに学べ」から「各国のIoT比較」という時代になっていくかもしれません。
(日刊工業新聞名古屋支社編集部 ニュースイッチ副編集長 杉本要)

日刊工業新聞2016年4月22日付 自動車面

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

 加速度的に取り組んでもらいたいものの、目指すべきは生産性を高めることではなく新たなノウハウ提供クラウド実現など、サービスビジネスへとイノベーションする事を狙うべきだ。欧米と比べて単純に遅れていると言うより、FAや自動化では進んできたものの、それらが工場単位で一品一様だった事がつながらない工場、ノウハウ共有できない工場となってきた。それでもこれまでは生産性高く守り続けたきたことは遅れているのではなく特筆に値する。  一方で、グローバルにビジネスが広がりマネジメント人材が不足し、一方で熟練工が不足する中ではOTに今まで高価でかつからないと避けてきたITを使わざるをえない。この時に目指すのが生産性ではなく、次のデジタルファクトリーのサービスモデルでなければならない。同じものづくりの中だけで生産性改革を唱えていても早晩追いつかれることは必至。ビジネスモデルイノベーションこそIoTで目指す姿だ。

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