ロボット大国の日本でなぜ災害時に有効活用できないのか

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)現場で役立つ訓練と“実戦経験”を

  • 0
  • 1
東北大学などが災害時を想定して開発したロボット「クインス」
**熊本地震から見えてくる課題
 2011年の東北大震災の爪痕も癒えないまま、また、大規模な震災が熊本で起こった。ウェブ、テレビ、新聞などで見る光景は、悲惨としか形容しようがない。強い絶望を目にすることになる。心を痛め、なんとかしたいと思う人たちも多いだろう。

 しかし、そこで確かに生き、未来をつなぐ光景を目にすることができる。その命を連帯し、つなぐ使命を私たちが共有して負っている。このような災害時に、人が行けない過酷な環境、あるいは人ができない作業こそ、ロボットに期待されている。

 ロボット業界に身を置くものとして、11年の福島原発事故へのロボット投入時は歯がゆい思いをした。結果的には、国産ロボットも投入されることとなったが、初期には、フランス、米国など海外のロボットが投入されたからである。

 ロボット大国であるにもかかわらず、国産ロボットの投入が遅くなった理由は、「実戦経験」がないためだ。確かに、災害対応ロボット、原発向けロボットの開発は、過去にもなされてきた。

 しかしそれらは、実戦経験を踏まえるまでもなく、展示場に飾られるだけの存在になっていたり、訓練されるようなこともなかったために、使う人がいない、使い方もわからないという事態になってしまっていた。このことが、国産のロボットはあるにもかかわらず、投入が遅れた大きな要因となった。

ロボットを事前に防災仕様しておく


 元々、事故が起こらない想定であれば、人間が作業できない環境下での作業を想起させるロボットの投入が避けられたとも考えられる。急にロボットそのものが進化するわけではなく、現場経験を踏まえて使い物になるようになるのである。

 災害、事故が起きた場合には、まず、被害状況を把握するため現場の状況を知り、救助、復旧の見通しを立てることが急務となる。その最初の状況をいかにはやく正確に知ることができるかが重要だ。

 その情報をどのように処理するのかも問われる。各自治体、政府・行政、民間企業などの多様なステークホルダーがさまざまな方法で情報共有と連携を行うため、対応にあたっては、システマティックに機能することが求められる。

 そういう意味では、各種防災関連の仕組みにロボットがあらかじめ組み入れられ、使われるようになってこそ、いざという時に最大限活躍できる。そうした連携と、各種国際的なロボットの競技大会、さらには、インフラの点検等で日常的に使われることで、ハードとシステム両面で向上し続けることが必要だ。
三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー。2003年(平15)早大院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了、同年三菱総合研究所入社。15年NTTデータ経営研究所に入社し産業戦略チームリーダー

日刊工業新聞2016年4月22日

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

今、熊本県南阿蘇村では行方不明者の捜索に遠隔操作型の無人建機が投入されている。これも広く言えばロボットの一つだ。災害対応ロボットと無人建機の活躍の違いは何かという議論では、記事で指摘されているような実戦経験はもちろん、機能や性能面が取り上げられることも多い。ただもう一つ、大きな違いが業界団体の有無だ。無人建機は各メーカーの無人建機の稼働状況などの把握や、オペレーターの人材育成などを行う「建設無人化施工協会」が窓口となり展開してきた。次に起こりうる災害にどう対応するのか。災害対応ロボットを活用させるのであれば、実用化や普及のボトルネックが何か、見極め迅速に対策する必要がある。

関連する記事はこちら

特集