「シウマイの街」になる…崎陽軒と連携、栃木・鹿沼商工会議所の挑戦
鹿沼商工会議所が「かぬまシウマイ」を使った街おこしを進めている。「シウマイ弁当」の崎陽軒(横浜市西区)の初代社長、野波茂吉氏が栃木県鹿沼市出身であることに端を発する取り組みだ。2020年4月の開始以前は市内に数軒程度だったシューマイ提供店舗が、現在は約70軒まで増えた。同会議所はかぬまシウマイの組織化の検討に着手している。(栃木・辻本亮平)
取り組みのきっかけは、コロナ禍などで経済が停滞した地域に活気を取り戻そうと、鹿沼商工会議所が崎陽軒に連携を打診したことだ。20年10月には同会議所、同社、東京芸術大学の3者で、街おこしのシンボルとなる「シウマイ像」をJR鹿沼駅前に設置する覚書を締結。21年6月に鹿沼市内で崎陽軒から講師を招いたプロ向けの「おいしいシウマイ講座」を開くなど「シウマイの街」づくりで連携した。
シューマイの提供店舗は徐々に増え、同会議所も「シウマイマップ」の配布やポスター掲示、メディア露出で飲食店、小売店を後押し。東武鉄道の新鹿沼駅前には冷凍品の自動販売機を設置した。
同会議所の片柳伸一会頭は、自身が社長を務める地域スーパーの八百半フードセンター(鹿沼市)でオリジナルシューマイ開発の先陣を切り「前後でシューマイの売り上げは推計3倍程度となった」と手応えを示す。
同会議所が22年に民間のリサーチ会社に依頼した調査の結果によると、街おこし事業による経済波及効果は5億5600万円で、地域の経済活性化に一定の成果を上げた。
街おこしにはモノづくり企業や公共交通事業者も一役買っている。24年11月に開催したシューマイの食べ比べができる「第2回かぬまシウマイ博覧会」では、イベントの目玉となる巨大蒸し器をアルミニウム加工のカネコアルトップ(同)と木工製品製造の星野工業(同)が製作し、来場者に注目された。
路線バスを運行する関東自動車(宇都宮市)は、同会議所と協定を結び、「餃子のまち」の宇都宮市と鹿沼市の間で「シウマイ餃子ライン」を走らせる。タクシー会社の栃木ロイヤル交通(鹿沼市)は、シューマイ型のあんどんを載せた「かぬまシウマイタクシー」で、市街地のシューマイ巡りツアーを企画した。街おこしは「市外から人が来る環境づくりに良い取り組み」(星野詠一星野工業社長)と食品関連以外の地域企業も期待を寄せる。
街おこしをさらに進める上で、課題もある。市内10店舗が出店した第2回かぬまシウマイ博覧会は、市内外から推計5000―6000人が来場し活況だったが、普段は約70軒のシューマイ提供店舗が市街地に点在しており、食べ歩き目的の観光のネックとなる。
ギョーザによる街おこしで30年超の歴史がある隣町の宇都宮市では、協同組合の「宇都宮餃子会」がフードコート方式で各人気店の味を楽しめる店舗を直営し、観光スポットとなっている。「餃子通り」には専門店が軒を連ね、観光客が行列を作る。こうした身近な先行事例と比べると、開始から5年目のかぬまシウマイ事業は、観光誘客の面で発展途上なのが現状だ。
片柳会頭は「新鹿沼駅前にかぬまシウマイを提供する店舗を設置できないか」と構想を披露する。同会議所はかぬまシウマイの組織化の検討に着手しており、25年度以降に順次、事業計画を策定する予定だ。組織化によりかぬまシウマイのブランド管理やワンストップの売り場作りなど、各関係者がより連携した取り組みを進める考えだ。