屈折率2.0達成…AGC、メガネ型端末向けガラス基板で攻める
AGCは拡張現実(AR)や複合現実(MR)グラス向けガラス基板の提案を強化する。AR・MRグラスの導光板にガラス基板を適用することで、視野角の拡大や画像の鮮明化につながる点を訴求する。ARやMRの進化に伴い、現実の風景に仮想の視覚情報を組み合わせた表示に対応するメガネ型デバイスの市場拡大が見込まれる。展示会の出展などを通し、新規顧客へのアプローチやニーズの発掘を狙う。
AR・MRグラス向けのガラス基板は、より広い視野角を実現できるように高屈折率であることや、画像を鮮明に見せるために高透過率であることが要求されている。そのほか高平たん性や表面の平滑性など、画像を精度高く伝搬させるために高度なガラス加工技術も求められている。
AGCはこれらの要求に応えて最適なガラス組成を開発し、屈折率2・0を達成した。さらに製造工程において泡や不均質な部分ができないようにガラスを溶かす技術も活用。表面の平滑性を高めることにより、映像の見えやすさも確保した。現在は複数の顧客にサンプルを出荷し、評価を受けている段階だ。
AR・MRグラスはスマートフォンに次ぐ次世代デバイスとして注目されている。市場としては2027、28年から伸びると予想されており、デバイスの開発競争が激化している。競合素材となる樹脂基板と比べてガラスは高い屈折率が出せるため、より広い画角を実現できる。樹脂基板では達成が難しいこれらの特性をアピールしていく。
同製品は米ラスベガスで7日開幕する家電・IT見本市「CES」に展示する。CESに先だって行われたイノベーションアワードにおいて、AR・MRグラス向けガラス基板「M100/200シリーズ」がXRテクノロジー&アクセサリー賞を受賞した。若月博執行役員事業開拓部長は「受賞は市場からの期待感の表れではないか」と分析する。
一方、ガラス基板の課題は軽量化だ。80グラム程度の軽いスマートグラスが登場しており、装着感に影響を与えるため製品の差別化ポイントとなっている。ただ屈折率などを高めるためには比重の高い元素を混ぜる必要があるため、屈折率や光学特性と軽量化は本来相反する要素だ。
同社は現在の5、6種類をさらに拡充する予定。若月執行役員は「ラインアップを増やし、顧客ごとに異なるニーズに応えていく」としている。