2本目滑走路供用へ…拡張着々の福岡空港、都市成長けん引へ“見通し良好”か
離着陸能力が向上
九州の玄関口である福岡空港で、新施設の運用が続々と始まる。国は2本目となる滑走路を増設中で、離着陸能力の増強を図る。さらに空港運営会社による旅客施設の投資も形になってきている。コロナ禍で落ち込んだ旅客も、インバウンド(訪日外国人)を中心に回復しており、施設面で飛躍の足場を固める。(西部・三苫能徳)
役割分担で“過密”対策
福岡市中心部にある博多駅から地下鉄で5分ほどの距離にある福岡空港。アクセス性の良さ、国内外への就航路線の多さから、福岡の成長を支える原動力の一つになっている。
他方、利便性と表裏一体で運航の過密性も高い。国土交通省航空局によると、福岡空港の空港別着陸回数(2023年度)は国際・国内合わせて約9万2000回。羽田、成田に次いで3番目に多い。関西、那覇が福岡に続くが、福岡以外はいずれも滑走路を複数擁する。
その福岡空港にも2本目の滑走路が完成する。長さ2800メートルの既設滑走路の西側に、国は新たに同2500メートルの滑走路を整備中。3月末に供用を始める計画だ。
ただ滑走路同士の間隔が約210メートルと比較的狭いため、増設滑走路を主に国際線の離陸に、既設滑走路を着陸と国内線の離陸に役割分担する。全体の離着陸回数は1時間に40回と、現在の38回から微増にとどまる。
とはいえ年1万2000回ほど増える計算で、1本が使えない場合も、もう1本で運用を続けるなど機能強化に確実につながる。
国の整備と並行し、空港運営を国から受託する福岡国際空港(FIAC、福岡市博多区)は、旅客施設の整備を進める。増設滑走路の供用時期に合わせ、3月28日に国際線ターミナルの増改築が完了する。
保安検査場と出入国検査場を拡張移転するほか、免税店とフードコートを新たに開業。これまで段階的にラウンジのリニューアルや搭乗待合室の増床、搭乗橋の増設、自動手荷物預け機の導入などを実施し、いよいよグランドオープンとなる。
FIACは滑走路増設が就航路線や旅客の拡大につながると見込んでおり、長期計画に基づき旅客施設の拡充を続けている。
旅客最多、出国増狙う 飲食・物販店、サービス拡充
福岡空港の24年4―9月期の旅客数は、国際線が410万人でコロナ禍前の18年同期比で22%増と開港以来最多となった。国内線も同1%増の886万人で、コロナ禍前を超えた。25年3月期には国際線初の800万人超えと、旅客数全体の過去最多を期待する。
FIACの業績にも好影響を及ぼす。24年4―9月期は上期初の当期黒字になった。田川真司社長は「良い決算」と喜ぶ。25年3月期は当期赤字の見込みだが、「今後、通期で黒字化できるようにビジネスモデルの変革に努める」と力を込める。
田川社長は「アウトバウンド(出国)がまだ少ない。増やせるようにPRしたい」と課題を挙げる。為替要因もあるが、24年10月のアウトバウンド実績は18年10月の約8割にとどまる。18年10月比5割増と大きく伸びるインバウンドと差が開く。
こうした状況を受け、FIACは法人向けビジネス会員サービス「フクビズ」を4月に始める。国際線の保安検査場優先レーンやラウンジの利用、飲食・物販店舗や到着免税店での割引をパッケージにして提供する。半導体産業の再集積をはじめ九州で経済が活性化する中、福岡空港からの出張需要などの拡大につなげる狙いだ。
24年12月には滑走路に先立ち、視認性向上のために国が新設した管制塔の運用が始まった。高さ90・9メートルで、羽田空港に次ぐ2番目の高さを誇る。大阪航空局福岡空港事務所の森島隆広空港長は「空港全体が一目で見える」と胸を張る。
都市の成長をけん引する役割を担う空港。その機能強化が地域の未来も“見通し良好”にできるか、大きな期待がかかる。