高級ブランド撤退など求心力低下の危惧も、水戸駅前中心街で生まれ始めた再興の芽
水戸市はJR水戸駅前の中心市街地で、地域活性化に向けた取り組みを進めている。駅前通りでは2024年12月末、高級ブランド「ルイ・ヴィトン」が水戸京成百貨店から撤退するなど求心力の低下が危惧されている。空き店舗への入居促進や各イベントを開催し、人を呼び込む。再開発を予定する街区もあり、再興の芽が生まれ始めている。(茨城・石川侑弥)
市、空き店舗入居に補助金
中心市街地は、水戸駅前から北西方向に伸びる国道50号線沿い、約2キロメートルの地域を指す。16年に策定した「水戸市中心市街地活性化基本計画」を基に市は、市街地の活性化を図る。目指す将来像としては「多様な人々が集い、暮らし、働き、皆が魅力を味わえる、快適でにぎわいのある水戸のまちなか」を掲げ、歩行者数や居住人口、空き店舗率を具体的な指標に挙げる。
駅周辺の商業施設や水戸城の史跡がある地域と、駅から1・5キロメートルほど離れた水戸芸術館や水戸京成百貨店がある地域を核に人を呼び込む。23年7月に市民会館を中心市街地に移転して開館したほか、水戸城の大手門を20年2月に復元するなど、交流人口の増加に取り組む。
空き店舗で営業を始める事業者には、最大100万円の補助金を用意し、市街地の空洞化を防ぐ。23年度の開業は前年度比11件増の21件だった。水戸市商工課の倉川健一係長は「コロナ禍で出店しにくかった反動もあり、若者を中心に注目が高まっている」と期待する。
イベントも充実する。24年5月の大型連休中に中心市街地で開いた「水戸まちなかフェスティバル2024」では、地元の飲食店や学校など65団体が参加し、計7万2000人が来場した。25年度も5月3日に開く予定だ。
また、市街地には北関東有数の繁華街「大工町エリア」があり、飲食店など300以上が軒を連ねる。3月末まで開催中の「ダイクマチナイト」では、街にちょうちんを配置して夜の道を明るく照らすほか、名産の梅を使った特別メニューを各店で用意し、来客を楽しませる。
民間の再開発も活発だ。09年に閉店した水戸駅前の商業施設「LIVIN」跡地周辺の計画では、最高20階建ての集合住宅を含む複合施設の建設が進んでおり、26年11月の完成を目指す。また、水戸京成百貨店に隣接する地区でも大型集合住宅が建設される。倉川係長は「居住人口の増加にもつながれば」と展望する。
自転車・徒歩利用、徐々に成果
水戸市は東京都心から100キロメートル圏に位置する。江戸時代には水戸徳川家の城下町として、関東では江戸に次ぐ都市に発展した。一方で、地理的・歴史的な要因から、茨城県内は人口が各地域に分散している。
また、東京都心とつくば市を結ぶつくばエクスプレス(TX)が05年に開業したことで、都心やTX沿線地域への人口移動が進んでいる。
人口の分散から、もともと公共交通機関を使う習慣が薄く、茨城県民は自動車移動が中心だ。重ねて大規模商業施設の立地を抑止する法律の廃止や、水戸駅前にあった県庁が1999年に水戸市南部に移転したこともあり、人口の郊外への流出が加速した。
さまざまな取り組みの成果も出てきた。中心市街地活性化基本計画では、エリア12地点で平日と休日の2日間、歩行者と自転車の通行量を計測している。合計した歩行者通行量について23年度は、基本計画1年目の16年度比12・6%増の11万2941人だった。
倉川係長は「一時的な落ち込みもあったが、全体では人が増加に転じている」と解説する。市は周遊性を高めるレンタサイクル設置や飲食店ガイドの作成も手がける。高橋靖市長は中心市街地のまちづくりについて「市民会館を中心として、中心市街地のさらなるにぎわいの創出につなげたい」とコメントしており、人の交流を促す。