なぜ三菱自動車は再び「甘えと奢り」が出たのか

文=安東泰志(ニューホライズンキャピタル 会長兼社長)

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会見する三菱自動車の相川社長(20日)
 2004年にリコール隠し問題発覚後、独ダイムラークライスラーが手を引くと発表し経営危機に陥った際、我々はプライベートエクイティ(PE)ファンドとしてJPモルガンと組んで2000億円の資本を投入、再生支援を行なった。

 事業再生委員会では10のクロスファンクショナルチーム(CFT)を組成し、1000人の社員からのヒアリングと100人の社員の参加を得て徹底的に問題点を洗い出した。その際に最も問題だったのが、各部署が独立し、タコツボのようで風通しが悪い社内風土、さらに「開発・製造部門が上で販売部門が下」という顧客を向いていない文化だった。

 CFTでは、「今回のくやしさを逆に生かし、品質ナンバーワンを売りにしよう」として、敢えて保証期間の延長などの新機軸を打ち出した。また指示改修で済ませていた不具合もなるべく広くリコールするようした。

 稼働率が低いという理由で銀行が主張していた岡崎工場(愛知県)というキー拠点の閉鎖を止めるために、水島工場(岡山県)の稼働率を上げようと我々が考えたのが日産とのJV(合弁会社)だ。これにも当初は三菱重工業は「日産ごときと組めるか」と否定的だったが、うまく行っていた。

 プラットフォームの統合や開発や購買の改善、さらには経営情報システムや管理会計を改善して情報が社内で共有できる仕組みも作った。

 同時に、CFTの成果を500項目もの施策に落とし込だが、途中から東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)が三菱グループ3社(三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行)の支援を前面に出すことを主張し始めたので(恐らく三菱重工の持分法会社にして金融庁査定を乗り切るという理由)、我々は再建にめどがついたのを契機に手を引いた経緯にある。

 ファンドが去った後、銀行が主張したグループ内輪の支援によって自立心が失われ、甘えと驕りが出てきたのではないかと懸念する。

 今後は世界の数百万台のユーザーへの責任も考えて支援の可否が検討されるのではないか。

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
執行役員 DX担当

安東さんとは以前からよく三菱自動車のことについて話しました。再生当事者の貴重で重いコメントです。今回の事後処理で特にポイントになるのは三菱グループ3社の中でも三菱重工だと思います。

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