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予想外の“談論風発”…温室ガス35年度60%減、環境省・経産省が合同会合で異例

企業負担配慮も世界基準に

温室効果ガス排出削減目標を話し合う環境省と経済産業省の合同会合は、異例の展開となった。終盤に突入しても委員の間で意見の隔たりが大きく、急きょ19、20、24日の3日間に集中開催した。大橋弘座長(東京大学副学長)は「どちらかへの収斂(しゅうれん)は適当ではない」と苦慮しつつ、2035年度に13年度比60%削減、40年度に同73%削減する案を取りまとめた。

発端は11月末の会合だった。終了30分前に事務局が35年度「60%減」案を提示した。現在の排出削減ペースの延長線というのが根拠だ。だが委員からは「これでは雑な議論」「各委員が3分でコメントするだけだと議論ができない」といった批判が出た。

環境省幹部は「進め方について真摯(しんし)に受け止めている」と反省する。各委員が順番に発言する進行をやめ、19日から委員同士が議論する形態に変えた。“予定調和”と思われがちな国の会議が“談論風発”となった。

19日に加え、急きょ20日にも会合を設定。会場も民間の会議室から経産省庁舎に変えて時間の延長を可能にすると19日は20時まで議論が途切れなかった。

研究機関やスタートアップ企業幹部は「60%以上」の削減を求めた。地球温暖化による深刻な被害を防ぐため、排出量を19年比60%削減することが世界の共通認識となっており、日本の基準である13年度比にすると「66%減」となるためだ。

一方の事務局は「60%減」でも国際社会が合意した気温上昇の目標に合致すると主張。また、企業負担を心配して「60%未満」を求める根強い意見もあった。他にも中小企業が前向きに取り組める目標や、平等な負担を求める意見が出た。

まとまる気配がなく、NGOの委員が「幅を持たせた目標にしてはどうか」と提案したが、事務局案通りの「60%減」となった。

新目標は意見公募を経て正式決定し、25年2月中に国連に提出する。
日刊工業新聞 2024年12月27日

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