ニュースイッチ

尾州織物復権に向け若手が新風吹き込む デニムや特注デジタルプリントに挑戦

尾州織物復権に向け若手が新風吹き込む デニムや特注デジタルプリントに挑戦

織物技術を生かしたシバタテクノテキスの自社ブラン「カラーデニム」

 “尾州織物”復権へ―。毛織物産地として知られる愛知・尾州地域の若手経営者らが、新たな需要創造に奮闘している。世界的にもレベルが高い織物、染色の技術に新しいアイデアを融合し、デニム商品の自社ブランド立ち上げや、個人向けのデジタル印刷サービスなど新規事業に果敢にチャレンジ。新製品・サービスを相次いで打ち出し、伝統産業に新しい風を吹き込んでいる。

 尾州産地の毛織物は衣料からカーテンなどインテリア織物まで経済成長とともに発展。輸入品に押される傾向が続いていたが、近年は消費者の本物志向など意識の変化に伴い、見直されているのが産地で培った技術力だ。

 シバタテクノテキス(愛知県一宮市、柴田和明社長、0586・87・6446)は、織物技術を生かした自社ブランドのカラーデニム「ランヘリ」を立ち上げた。セレクトショップのほか、百貨店で期間限定で取り扱われるなど引き合いも増加。ブランドアイテムを増やして「品質だけなくデザイン性も追求してブランド力を高める」(柴田社長)。

 堀江織物(一宮市、堀江克見社長、0586・53・2525)は、柄を布にデジタル印刷するサービスを提供している。1柄1メートルからの少量多品種の注文が可能。実店舗やウェブサイトから受注し、BツーC(対消費者)市場参入を目指しており「5―10年後の新規事業を掘り起こす」(堀江賢司マーケティング部長)。

 福祉分野では公的機関が商品開発を支援。尾張繊維技術センター(一宮市)と一宮地場産業ファッションデザインセンター(同)は、地元繊維メーカーと共同で車いす用レインコートを製品化した。

 企業単独での取り組みにとどまらず、各社が強みとする技術を持ち寄った商品開発も始まっている。シバタテクノテキスなど4社は織物や印刷といった得意分野を持ち寄り、これまでにカップホルダーを商品化。地元の木曽川商工会のイベントなどで販売し、消費者の反応を探っている。

 次代の繊維産業を担う若手経営者らは、新しいアイデアと伝統技術を融合し、尾州織物の復権に挑んでいる。
(文=名古屋・一色映里奈)
日刊工業新聞2016年4月21日 中小企業・地域経済2面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本の織物技術の高さには定評がありました。若手による柔軟な発想から伝統技術と新商品開発の融合が進み、世界に打って出ることが期待されます。

編集部のおすすめ