代理店の情報漏洩、大手4社で250万件超…不祥事相次いだ損害保険はどう是正するか
損害保険業界は大手4社が保険料調整行為をめぐる業務改善の途上にある中、2024年も不祥事が相次いだ。4社で計250万件超に上る保険代理店における顧客情報の漏えいが発生した。代理店に出向していた社員が、シェアを把握するために所属会社に情報を漏らしていた事例があった。損保各社は不正の是正や代理店への便宜供与の廃止に向け、今後は代理店から出向者を引き上げる方針だ。
漏えい問題の真因を把握するため、金融庁は7月と11月に大手4社に報告徴求命令を出した。2度の命令を受けたことに関し、日本損害保険協会の城田宏明会長(東京海上日動火災保険社長)は12月の定例会見で「大変なご迷惑をおかけした」と陳謝した。4社は、2回目の命令に基づく報告を13日までに行った。金融庁は各社の報告内容を精査した上で近く処分を下す。業務改善命令が出る可能性もある。
一方、4社は代理店への出向のあり方を抜本的に見直す。一部の代理店は保険の事務手続きを損保からの出向者に頼っており、損保側も代理店を手助けするなどの便宜供与で自社の保険が優先的に扱われることを期待していた。
こうしたもたれ合いの解消に向け、損保協は9月、保険代理店への営業目的での出向を禁止する指針を公表した。各社は便宜供与を疑われることを避けるため、出向を原則的に取り止める方針だ。
金融庁の有識者会議の資料によると、大手4社は2023年3月末時点で合計で約1520社に約2370人の出向者を派遣している。出向先の75%は保険代理店が占め、このうち自動車関連が約4割を占める。自動車ディーラーなどの兼業代理店は、本業が別にある中で、保険の詳しい手続きまで手が回らない場合も少なくない。
こうした代理店に対し、東京海上の場合、事務を引き受ける代わりに代理店への手数料を減らす「分業モデル案」の導入を検討している。出向者の引き上げに一部の代理店は悲鳴を上げており、損保と代理店との出向者をめぐる議論が早期に妥結点を見いだせるかが注目される。
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