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中国経済、減速底打ちか。インフラ投資下支えも業界によって温度差

当面の成長率は底をはう展開
 中国経済の減速が底打ちしたとの見方が出てきた。経済を下支えするインフラ投資が2016年に入り急増し、住宅投資の回復が製造業にもプラスに働く。3月の輸出は9カ月ぶりにプラスに転じた。ただ、15日に発表された16年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は実質で前年同期比6・7%と、15年第4四半期より0・1ポイント低下。今後6・5%前後まで下がるとの見方があり、先行きは楽観視できない状況だ。自動車、工作機械、建設機械など業界ごとに温度差もある

【自動車 減税効果も明暗】
 中国自動車工業協会(CAAM)によると、16年1―3月の中国新車販売(出荷ベース)は、前年同期比6%増の653万台と堅調な伸びを示した。15年10月に始まった小型車の減税措置の効果が市場をけん引しているようだ。

 日本車メーカーを見ると、春節(旧正月)の時期がずれた2月は落ち込んだり伸び悩んだりしたが、季節要因を除けば、日産自動車トヨタ自動車ホンダマツダの上位4社は堅調に推移している。一方、スズキ三菱自動車、富士重工業は苦戦が続き、明暗が分かれている。

【工作機械 車向け底堅く】
 難加工をこなす日本の工作機械は中国での受注が底堅い。とはいえ、顧客の業種により濃淡があるようだ。好対照なのがスマートフォン(スマホ)と自動車だ。スマホ向けは14年度に約2400億円の受注があったが、15年度は約1000億円に減った。16年度もこれまで大口受注は見当たらない。

 自動車向けは底堅い。中国と外資企業との合弁にとどまらず、広州汽車など地場ブランドの設備投資も活発だ。3―4月に数社が中国市況の低迷を主な要因に、16年3月期連結業績予想の下方修正を発表した。先行きの判断はまだ難しい。

【建設機械 反転に慎重な見方】
 建設機械は低迷が続いてきたものの、4月に新たな排ガス規制が適用されたのに伴い、3月までは従来の規制に対応する旧型機への駆け込み需要が高まった。しかし反転するまでには、まだかなりの時間がかかる可能性が高い。

 日本建設機械工業会(建機工)によると、15年4月―16年2月までの中国向け輸出金額は前年同期比約7%減の144億円。建機各社は底打ちの時期には慎重な見方を示している。中国の景気減速に歯止めがかかるかどうか不透明な状況では、建機市場の本格的な回復は難しいといえそうだ。

野村資本市場研究所・関志雄シニアフェローに聞く


 ―成長率が下がり続けています。現状をどう捉えていますか。
 「1―2月が底で3月から上向く兆しがある。製造業購買担当者景気指数(PMI)は、3月に景気判断の節目となる50を8カ月ぶりに上回った。深センや北京など大都市を中心に住宅価格が回復し、住宅投資も戻ってきた。これにより、鉄鋼など製造業の需要も戻りつつある。中国は住宅価格と株価が逆相関の関係にある。株価がさえない中で、投資資金が株式市場から住宅市場に流れている」

 ―一段と上向かせるため、財政出動は期待できますか。
 「経済改革の重点は『供給側改革』に移っており、一部の市場関係者が期待するような景気対策は打たないと見る。中国政府は16年の財政赤字の対GDP比を15年の2・3%から3%に拡大する方針だが、これは成長率が低下したことに伴う税収減と、企業への減税措置を見込んだものだ」

 ―それでは、いつ景気は回復しますか。
 「過剰生産能力を解消するには時間がかかり、景気回復の足取りが重い。労働力など経済全体の供給能力を示す潜在成長率は現在7%前後とみられ、生産年齢人口の減少で20年には6%程度まで下がる見通しだ。それを併せて考えると、当面の成長率はL字のように底をはう展開と見る」

 ―過剰生産能力問題の見方は。
 「中国政府は生産能力の削減により、石炭と鉄鋼分野で180万人の余剰人員が出ると見積もり、失業対策として2年間で1000億元(1兆7000億円)を支出すると表明した。足元の中国都市部の求人倍率は1・1倍とほぼ完全雇用の水準だ。賃金未払いに抗議する労働者のデモが散発的に起きているが、広範囲にわたる社会不安までエスカレートしないだろう」
日刊工業新聞2016年4月20日「深層断面」より抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
かつてのような無駄な公共工事は行わない。費用対効果が大きい鉄道や道路を見極め、効果的に打ってくるだろう。

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