初心者は気をつけて。3DCAD の設計でやりがちな失敗
工具が干渉してねじが回らない!
何が起こった⁉
「3Dモデルで確認したときは気がつかなかったけれど、実際にものを作ってみたら工具が入らず、ねじを回せなかった……。作ってから気がついても後の祭りだ!」
何が原因なの?
3DCAD で設計する際にやりがちな失敗です。3D モデル上ではどんなアセンブリでも組むことができますが、実際の機械ではそうはいきません。組立作業を行うためには必ずスペースが必要です(図1)。スペースの検討を忘れると、せっかく作った部品が取り付かず、機械全体を作り直さなければならなくなるかもしれません。要注意です。
気をつけよう‼
まず、ボルトを入れられるかどうかを考えましょう(図2)。特に凹んだ場所などは要注意です。次に、ボルトを回せるかどうかを検討します。工具が入るかどうかはもちろん、工具自体を回せるスペースがあるかも確認しましょう。六角レンチであれば60°以上、スパナであれば30°以上回せるスペースが必要です。狭いスペース用の特殊な工具も市販されていますが、一般的に入手できる標準工具で回せるように設計したほうがよいでしょう。高さ方向にスペースがない場合は、六角穴付きボルトではなく六角ボルトなどを使う手もあります。また、部品の形状には問題がなかったけれど、隣り合うボルトが邪魔してボルトが外れないという事例もよくあります。設計するときは、頭の中で組み立てを入念にシミュレーションしましょう。工具の回転の軌跡を3Dモデル化しておいて、検証するのも有効です(図3)。
学ぼう!
・ボルトを回すスペースを考慮せずに部品を設計してしまった
・ボルトが入るか、工具が入るか、工具が回せるかをしっかり確認しよう
・工具の回転の軌跡を3D モデル化しておくと、効率的に検討できる
ポイント
● 3Dモデル上で忘れがちな、組立作業に関する失敗
● 組立作業には必ずスペースが必要になる!
● ボルトや工具が入るか、それらを回せるかを考えよう!
(「集まれ!設計1年生 はじめての締結設計」p.144-145)
<書籍紹介>
トラブルが起こりやすい設計のポイントのひとつに、締結部分の設計がある。締結にはねじ・ピン・リベットなどさまざまな種類があり、目的や場所に応じて何を使うか、どのくらいの数を使うのか考える必要がある。シンプルながら奥深い締結に関する設計を、SNSで人気の機械設計者がやさしく解説した一冊。
書名:集まれ!設計1年生 はじめての締結設計
著者名:谷津祐哉(しぶちょー)
判型:A5判
総頁数:168頁
税込み価格:2,640円
<編著者>
谷津祐哉(やつ・ゆうや / しぶちょー)
機械メーカーに勤める現役の技術者。機械設計担当として産業機械の新製品開発に従事し、現在はAI・IoTを用いた新機能開発を担当。
個人活動としてモノづくり技術に関する情報発信を行っており、技術ブログ(しぶちょー技術研究所)・音声配信(Podcast:ものづくりnoラジオ)・SNSなどで幅広く活躍。専門家でなくても楽しめるわかりやすい解説で人気。
<販売サイト>
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4526083593
Rakutenブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/18022316/
日刊工業新聞ブックストア:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10094315.html
<目次>
第1章 締結って何だろう?
第2章 教えて! ねじの設計
第3章 教えて! ピンの設計
第4章 教えて! リベット締結の設計
第5章 教えて! 軸の締結
第6章 気をつけたい! 締結の失敗事例と対処策