機械設計初心者が知っておくべき「締結」と「接着」の違い
締結って何だろう?
みなさんは、機械を分解したことがありますか。私は幼いころ、よく自転車を分解しては元に戻せなくなって困り果てたものです。自転車に限らず、ラジオやゲーム機、原付なども好奇心から分解してきました。あらゆるモノを分解して気づくのは、部品の形のシンプルさです。一見すると複雑怪奇な機械であっても、分解してみると一つ一つの部品は意外とシンプルな形をしているのです。我々の身体が小さな細胞の組み合わせでできているのと同じように、機械もさまざまな小さな部品が組み合わさることで、一つの機械として成り立っています。そして、そんな部品同士をつなぎ合わせているのが、本書のメインテーマである「締結」の役割です。
物同士をつなぎ合わせる方法としては、接着もありますよね。壊れたものを瞬間接着剤でくっつけて直した経験や、接着剤が指について指同士がくっついてしまった経験、誰しもあるでしょう。では、締結と接着の違いは何でしょうか。締結を辞書で調べると、「かたくしめてむすぶこと」と出てきます。読んで字のごとく、「締めて結ぶ」のが締結です。「結ぶ」ということは、つまり「ゆるめられる」ということです。ここが接着と締結の大きな違いです。接着は剥がさないことを前提としている一方、締結は取り外しが前提にあります。そのおかげで、我々は機械を分解してメンテナンスしたり、組み直したりできるのです(図1)。
「締結」という言葉は、もの以外にも条約や契約などを結ぶときにも使われますよね。こういった契約も双方の同意があれば破棄することができます。部品の締結もしかり、締結を解いたり、再度締結したりすることができるわけです。契約を締結する際は、約束事を記した契約書が取り交わされますよね。部品の締結では契約書はありませんが、その代わりに締結部品が用いられます。締結部品ごとに締結に関する約束事が決められており、それを守れなかった場合、締結が失敗してしまうことがあります。そういう意味では、契約の締結も部品の締結も同じだと言えるでしょう(図2)。締結の際の約束事には、契約者(技術者)がしっかり目を通して理解しておくことが大切です。適当に締結してしまったら、思わぬトラブルを抱えることになるかもしれませんよ!
ポイント
● 機械を分解すると部品は意外とシンプル!
● 締結は「結ぶこと」で、接着とは違い取り外せる!
● 契約も締結も、約束守らないとトラブルになるかも!
(「集まれ!設計1年生 はじめての締結設計」p.8-9)
<書籍紹介>
トラブルが起こりやすい設計のポイントのひとつに、締結部分の設計がある。締結にはねじ・ピン・リベットなどさまざまな種類があり、目的や場所に応じて何を使うか、どのくらいの数を使うのか考える必要がある。シンプルながら奥深い締結に関する設計を、SNSで人気の機械設計者がやさしく解説した一冊。
書名:集まれ!設計1年生 はじめての締結設計
著者名:谷津祐哉(しぶちょー)
判型:A5判
総頁数:168頁
税込み価格:2,640円
<編著者>
谷津祐哉(やつ・ゆうや / しぶちょー)
機械メーカーに勤める現役の技術者。機械設計担当として産業機械の新製品開発に従事し、現在はAI・IoTを用いた新機能開発を担当。
個人活動としてモノづくり技術に関する情報発信を行っており、技術ブログ(しぶちょー技術研究所)・音声配信(Podcast:ものづくりnoラジオ)・SNSなどで幅広く活躍。専門家でなくても楽しめるわかりやすい解説で人気。
<販売サイト>
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4526083593
Rakutenブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/18022316/
日刊工業新聞ブックストア:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10094315.html
<目次>
第1章 締結って何だろう?
第2章 教えて! ねじの設計
第3章 教えて! ピンの設計
第4章 教えて! リベット締結の設計
第5章 教えて! 軸の締結
第6章 気をつけたい! 締結の失敗事例と対処策