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磁気メモリー応用で応答速度100倍以上に…東大、室温で書き換えられる交替磁性体を発見

磁気メモリー応用で応答速度100倍以上に…東大、室温で書き換えられる交替磁性体を発見

硫化鉄(FeS)の結晶構造。硫黄の三角形と鉄のスピン(矢印)がそれぞれ互い違いに向く(東大提供)

東京大学の高木里奈准教授と開田亮佑大学院生、関真一郎教授らは、室温で情報を書き換えられる交替磁性体を発見した。磁気メモリーに応用すると素子を100倍以上集積化し、応答速度を100倍以上高められると期待される。ありふれた元素で構成される硫化鉄で実証したため、資源制約の少ない次世代メモリーになる可能性がある。

硫化鉄が室温で交替磁性体として振る舞うことを実証した。硫化鉄の結晶では鉄原子が三角形に並んだ硫黄に上下から挟まれる形で存在する。三角形の向きは互い違いで、鉄のスピンも互い違いになる。スピンの向きが直上の三角形と同じ方向を向くか、反平行を向くかで仮想磁場の向きが逆転する。

実験では仮想磁場の向きに応じてホール抵抗率が約プラス0・06オームセンチメートルと約マイナス0・06オームセンチメートルに変化した。仮想磁場の向きは1テスラ程度の外部磁場で書き換えられた。

鉄のスピンは互い違いに並ぶため、物質全体では打ち消しあって磁化はゼロになる。漏れ磁場が発生しないため、メモリーなどに応用すると素子を密集させて高集積化できる。従来の強磁性体の素子に比べ応答速度が速く、磁気ノイズに強くなると期待されている。磁気抵抗メモリー(MRAM)に続く超高密度高速情報媒体の開発につなげる。

日刊工業新聞 2024年12月16日

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