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ローソン「50年農業」の狙い

コンビニが青果物の流通革命へ
 ローソンは「ローソンファーム」という現地生産者と組んだ農場を全国に展開している。今後は同農場を核に、地域で協業する生産者を拡大することにしているが、組む生産者が「継続して営農できる。30年、50年と続けられる農業を目指している」(下沢洋商品本部農業推進部部長)という。いわばローソンの1万1600店以上ある店舗を背景に農業の組織化、産業化を支援する格好だ。
 【若き生産者】
 ローソンファームの取り組みの柱は大きく分けて三つある。一つは「ローソングループの青果物の安定調達」、もう一つは「次世代を担う営農家の育成」、そして「計画生産、計画販売のシステム化」だ。この施策を推進し、質の高い青果物を生産することでパートナーの収益の安定化、継続した営農を目指しているといえる。
 今後、青果物の流通は大きく変革することが予想されている。農業生産者の高齢化による就農人口の減少、耕作放棄地の拡大、さらに安倍晋三政権が取り組んでいる強い農業の実現では流通体制の見直しなども掲げられており、青果物を大量に使用、販売する流通業としては、青果物の安定調達先の確保が課題として浮上している。
 ローソンファームでは、現在全国に22の現地生産者と組んだ農業生産法人を展開している。パートナーのほとんどが20代、30代と若き経営者。やる気のある若年の営農家を確保し育成している格好だが、今後はこの全国のローソンファームを核にして地域の生産者との協業を増やし、調達先を拡大する方針を打ち出した。
 【協業を拡大】
 現在、ローソンファームと協業している周辺地域の農場は全国約10農場だが、中長期的にこれを100カ所にまで増やしたい考えだ。これにより、現在ローソン店頭での販売や、サラダなどの加工品の全使用量のうち5%を供給量しているが、5年くらいかけ20%に引き上げる計画だ。安定調達を推進する体制を築く。
 ローソンファームが掲げる「継続した営農、30年、50年と続けられる農業」を目指すには“農業の産業化”が不可欠。ローソンファームではITを導入した農業、さらに生産に中嶋農法という土壌のミネラル分を調整し質の高い青果物を作ることを推し進めている。
 IT化では全国のローソンファームにクラウド型の管理ツールを導入、各社の財務状況の管理、栽培状況の管理をネットを通じてリアルタイムで本部が取得している。
 特に、栽培管理の「クラウド営農支援システム」では全ファーム統一の栽培管理フォーマットを採用、栽培スケジュール、使用肥料、農薬をローソン本社で一元管理。いわばローソンファームを通じて例えば調達した青果物はどこでどうやって生産されたか。完全にトレースが行える状態になっている。
 【土壌診断】
 それ自体、安全安心という付加価値を生んでいるが、ローソンファームでは今年から全ファームを対象に農業生産工程管理基準「JGAP」の取得を目指すことにしており、一段と透明性のある農業を実現する形だ。
 「中嶋農法」による生産も拡大する。同農法の特徴は土壌診断し適切な施肥を行い土壌のミネラルバランスを整え健全な土壌作り。さらに作物の健全な生育を維持する生育コントロール技術を駆使するもので質が高く、劣化が遅い青果物を生産できるという。
 今後は千葉に開く加工センターを手始めに、加工センターを増設の意向で一段と6次産業化も進める方針だ。
2015年03月09日 モノづくり
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
長く〝食べて〟いける農業の方法論確立が急がれますね。

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