新菱冷熱が「省エネ空調」攻勢、半導体・次世代電池分野で需要拡大の背景
低露点温度を安定維持
新菱冷熱工業(東京都新宿区、加賀美猛社長)が、ドライルーム向けの省エネルギー空調システム「アリフィカス」の提案を強化している。もともとは研究施設向けながら、半導体や次世代電池など新規分野の製品・部材メーカーの需要が拡大している。納入先の工場が大型化し、求められる制御エリアが大規模化していることが背景にある。1物件当たりの同システム設置数も投入当初の2013年は1台が一般的だったが、24年は17台という事例も出てきた。(地主豊)
アリフィカスの納入先は最先端の電池研究施設や大型パイロットプラント施設など累計で17物件。国の研究機関や大学でも採用が進む。新菱冷熱が産業案件と位置付け、主力とする工場などの新設・改修向けの受注が拡大する中、1物件当たりの制御エリアの大規模化と併せて「省エネオプション技術のアリフィカス導入数を伸ばす」(同社)と意気込む。導入物件の大規模化を示す数字がある。工期が当初の3―6カ月から15―19カ月程度に拡大。延べ床面積では同じく数十―数百平方メートルから数千平方メートル規模に拡大している。
アリフィカスは温度センサーで除湿ローター回りのエネルギー収支を測定する。センサーの値から給気露点を推定し、必要最小限の再生エネルギーに自動制御する。これにより低露点の環境を維持して安定的に低露点温度の空気を供給でき、除湿機の消費エネルギーを従来比約30―40%削減する。
1%以下の湿度を保つドライルームでは通常、デシカントローターを搭載した除湿機を使用する。ただ、ローターが水分を取り除くために大量の熱エネルギーが必要で、細かい制御が難しい。
ドライルーム内は人が入室するだけで湿度が増える繊細さがあり、水分量の予測は困難とされてきた。新菱冷熱は人の不在時には風量を減らすなど、人数に応じて風量を適切に制御し課題解決と省エネを両立する考えだ。
今後も他社や官学との連携拠点「イノベーションハブ」(茨城県つくば市)を活用し、技術開発でさらにユーザーニーズに応える。
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