EC利用者の返品費補う…保険「ついで買い」誘う、組み込み型広がる
他業界の販路に乗せて保険を売る「組み込み型保険」が広がってきた。三井住友海上火災保険子会社のMSプラスワン少額短期保険(東京都千代田区)は12日、PayPay保険サービス(同)などと連携し、電子商取引(EC)サイトで商品購入時に加入できる返品配送料を補う保険を発売したと発表した。住友生命保険もすでにコンタクトレンズの購入者向けに目の治療に特化した保険を売り出している。保険の「ついで買い」を誘い、潜在市場を掘り起こす戦略だ。
MSプラスワン少短は初商品として、ECサイト「Yahoo!ショッピング」の利用者向け保険を市場投入した。同サイトでアパレル商品を購入する際、「イメージと違う」や「サイズが合わない」といった状況になる場合も少なくない。その際、顧客都合で商品を返送する費用を保険で補う。
スマートフォンからショッピングサイトで商品購入と同時に保険に加入でき、保険金請求手続きもスマホで行える。12日に都内で会見したMSプラスワン少短の八星衛社長は、「保険によってECで商品を購入する不安をなくしたい」と意気込みを述べた。
PayPay保険サービスの兵頭裕社長は、「保険で(ショッピングサイトの)購買率向上に貢献したい」と述べた。
住友生命はジョンソン&ジョンソン(J&J)と連携し、J&Jのコンタクトレンズを一定数購入した人向けに、目の治療で入院や手術をした場合などに5000円を支払う保険を10月に発売した。保険料はJ&Jが支払い、消費者は金銭的な負担なしに保険の恩恵を受けられる。コンタクトレンズの購入者に保険の特典を用意し、顧客満足度の向上や販促につなげる。
組み込み型保険が広がってきた背景には、デジタル技術の進化がある。ECサイトなどから保険の申し込み画面にシームレスにつながるようになり、消費者は何かのついでに気軽に保険に入れる。
典型的なのが、ネットで申し込む旅行関連の保険だ。損害保険ジャパンの少額短期保険子会社、マイシュアランス(東京都新宿区)は10日、JALグループと協業し、消費者がジャルパックの国内旅行のパッケージツアーを予約した際に、その後の不測事態でキャンセルした場合のキャンセル料を全額補償する保険の案内を始めた。保険申し込みに必要な旅行や個人の情報が保険の入力画面に自動反映され、利用者は簡単に申し込める。
組み込み型保険は、さまざまな業種と連携できる可能性を秘めている。伝統的な生命保険や自動車保険などの市場が飽和状態にある中、今後、異業種と協業した組み込み型保険の開発が活発になりそうだ。
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