ERP統合に350億円投資…社内外連携深化へ、三菱ケミカルGの「改善の余地」
三菱ケミカルグループが2035年度までの長期ビジョンの実現に向けてスタートダッシュをかける。社内外の連携促進を担う新組織を、5カ年の新中期経営計画が始動する25年度にも立ち上げる方針だ。経営資源のフル活用により、新たなソリューションの創出を目指す。業務プロセスの標準化に向けた統合業務パッケージ(ERP)の統一も急ぐ。一連の施策を通じて連携の相乗効果を最大化し、中長期的な成長を確実にする。(山岸渉)
「(長期ビジョンなどを)作る中で本質的な問題点が分かった。当社は良いものを多く持っているが、うまくつなげることができていなかった。つなげる仕組みが一番大事だ」。筑本学社長はこう強調する。
三菱ケミカルグループは素材に関わる製品化技術や材料設計技術といった、多彩な技術力やモノづくり力を持つ点が強みだが、そうした力の相乗効果を追求する取り組みには改善の余地がある。研究開発や生産、営業などの部門間に加え、社外も含めて連携を深めることで、顧客や社会のニーズに応じたソリューションをより迅速に提供できる仕組みを追求する。
これに向け、ポートフォリオ改革推進を所管する荒木謙執行役員の下で、連携を促進する組織の立ち上げなどの具体的な枠組みを検討する。25年度から実行し、好循環を作り上げたい考えだ。具体的には営業・地域組織と顧客ニーズをつなぐ「市場密着」人材や、技術組織と営業・地域組織をつなぐ「技術翻訳」人材などを育てることで連携強化につなげることを想定する。
同社は現状、医薬品や産業ガスの事業が利益面を支えている。中計や長期ビジョンを推進する中で、高機能材料を手がけるスペシャリティマテリアルズ領域など、本業の化学事業を自社で最もコア営業利益を稼ぐ部門に育てていく方針。連携の推進を通じて、化学事業での新たな付加価値の創出を加速させる。
他方、ERPの統合もさまざまな合併を経てきた同社にとって課題だった。「大きく言うと五つほどの基幹システムがあり、それらをまとめるシステムまであった」(筑本社長)。新中計で約350億円を投じて25年度からの3年間でERPを統一し、業務の標準化を図る。筑本社長は、こうした施策で「さまざまなことが、もっとつながりやすくなる」と期待する。社内連携基盤として情報システムは欠かせず、ERPの着実な統合が求められる。