ベトナムで人気なのは揚げせんべい!亀田製菓、現地企業が販売主導で急成長
亀田製菓のベトナム事業が急成長している。現地企業との合弁会社であるティエン・ハ・カメダ(フンイエン省)の売上高は2015年3月期に約8億円だったが、16年3月期には2倍以上と大幅に増加する見通し。最大の要因は前回に進出した際の反省を踏まえ、役割分担を明確にした経営体制を構築できたことだ。その結果、大ヒット商品の開発にも成功。ようやく需要に対応できる生産体制も整いつつある。
亀田製菓は1996年にベトナムの国営企業などと4社合弁で同国に進出したものの、99年に同国市場から撤退している。だが、転んでもただでは起きない。亀田製菓は13年に同国のティエン・ハ・コーポレーションと2社合弁で再進出する。
前回の反省を踏まえ、明確な経営体制を構築した。亀田製菓は生産に、ティエン・ハ・コーポレーションは同国市場に精通しているグループ会社を通して販売に、それぞれ特化。また、想定されるリスクに耐えられるように、資本金を約5億円とした。
この体制で亀田製菓は同国産のジャポニカ米を使用し、日本で培った米菓生産技術を生かした商品を生産。一方、ティエン・ハ・コーポレーションのグループ会社は、同国で強力な流通ネットワークを有する。道路整備と自動車の普及が進んでいない同国で、1000人規模のセールス・バイク部隊が津々浦々まで商品を供給する。
第1弾商品「ヨリ」が好調に推移する中、勢いを加速するため、14年4月に第2弾となる揚げせんべい「イチ」を投入した。これは同国で高級で健康によいとされる蜂蜜の量を増やすなど、日本の「揚一番」を同国人に受け入れられるように味付けを変えたものだ。
ここでうれしい誤算が生じる。イチの販売が止まらない。そのため、ヨリの生産を中止し、イチを集中生産する。この思い切った経営判断も功を奏した。量産効果によりコスト削減と歩留まりの向上を実現した。ただ、今後も需要の増加が予想されることから、南部のハノイ工場に続き、15年10月に中部のダナン市近郊に建設した新工場を本格稼働する。
ティエン・ハ・カメダの生産量は15年3月期で約1600トンだったが、新工場が稼働したため、16年3月期は約4000トンと大きく増加した。これは「つくれば売れる」(ティエン・ハ・カメダ取締役の深井浩史亀田製菓経営企画部マネージャー)状態が続くことを物語っている。
今後の課題は、旺盛な需要に対応できる供給体制の構築だ。現在は工場がある北部と中部地域にしか十分に供給できない。そのため将来はジャポニカ米の生産地が多く、同国最大の都市であるホーチミン市がある南部に工場を建設することを検討中だ。さらに人手不足を解消するため、工場の省人化を進める。
今後はイチのバリエーションを増やすとともに、現在でも根強い人気があるヨリの復活を検討している。さらに食の安全・安心を徹底するため、品質管理体制の向上に継続的に取り組んでおり、ISOの取得も目指す。
前回の反省から導き出された成功の法則は合弁で進出し、販売は現地企業に任せ、自社は生産に特化するということ。亀田製菓のグローバル展開に勢いがつきそうだ。
(文=新潟支局長・中沖泰雄)
ヒット商品開発
亀田製菓は1996年にベトナムの国営企業などと4社合弁で同国に進出したものの、99年に同国市場から撤退している。だが、転んでもただでは起きない。亀田製菓は13年に同国のティエン・ハ・コーポレーションと2社合弁で再進出する。
前回の反省を踏まえ、明確な経営体制を構築した。亀田製菓は生産に、ティエン・ハ・コーポレーションは同国市場に精通しているグループ会社を通して販売に、それぞれ特化。また、想定されるリスクに耐えられるように、資本金を約5億円とした。
この体制で亀田製菓は同国産のジャポニカ米を使用し、日本で培った米菓生産技術を生かした商品を生産。一方、ティエン・ハ・コーポレーションのグループ会社は、同国で強力な流通ネットワークを有する。道路整備と自動車の普及が進んでいない同国で、1000人規模のセールス・バイク部隊が津々浦々まで商品を供給する。
うれしい誤算「イチ」
第1弾商品「ヨリ」が好調に推移する中、勢いを加速するため、14年4月に第2弾となる揚げせんべい「イチ」を投入した。これは同国で高級で健康によいとされる蜂蜜の量を増やすなど、日本の「揚一番」を同国人に受け入れられるように味付けを変えたものだ。
ここでうれしい誤算が生じる。イチの販売が止まらない。そのため、ヨリの生産を中止し、イチを集中生産する。この思い切った経営判断も功を奏した。量産効果によりコスト削減と歩留まりの向上を実現した。ただ、今後も需要の増加が予想されることから、南部のハノイ工場に続き、15年10月に中部のダナン市近郊に建設した新工場を本格稼働する。
ティエン・ハ・カメダの生産量は15年3月期で約1600トンだったが、新工場が稼働したため、16年3月期は約4000トンと大きく増加した。これは「つくれば売れる」(ティエン・ハ・カメダ取締役の深井浩史亀田製菓経営企画部マネージャー)状態が続くことを物語っている。
世界展開に勢い
今後の課題は、旺盛な需要に対応できる供給体制の構築だ。現在は工場がある北部と中部地域にしか十分に供給できない。そのため将来はジャポニカ米の生産地が多く、同国最大の都市であるホーチミン市がある南部に工場を建設することを検討中だ。さらに人手不足を解消するため、工場の省人化を進める。
今後はイチのバリエーションを増やすとともに、現在でも根強い人気があるヨリの復活を検討している。さらに食の安全・安心を徹底するため、品質管理体制の向上に継続的に取り組んでおり、ISOの取得も目指す。
前回の反省から導き出された成功の法則は合弁で進出し、販売は現地企業に任せ、自社は生産に特化するということ。亀田製菓のグローバル展開に勢いがつきそうだ。
(文=新潟支局長・中沖泰雄)
日刊工業新聞2016年4月20日 建設・エネルギー・生活2面