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【熊本地震】半導体各社、生産再開のめど立たず

余震で確認作業困難に。東日本大震災の時は3カ月かかる
【熊本地震】半導体各社、生産再開のめど立たず

震災発生で稼働停止が続くルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリングの川尻工場(震災前)

 熊本県や大分県で発生した大地震から週が明け、半導体各社は対応に追われている。ソニーやルネサスエレクトロニクス三菱電機などは15日から熊本県内の工場の稼働を停止。余震の影響もあり確認作業はなかなか進まず、生産再開の見通しは立っていない。各社は従業員の安全確保を第一にしながらも、確認作業と稼働再開準備を急ぐ。

 ソニーは主にCMOS(金属相補型金属酸化膜半導体)画像センサーを手がけるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本県菊陽町)の熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)で、稼働停止が続く。余震の影響でなかなか進まないものの、今も内部を調査中だ。

 生産するCMOS画像センサーはスマートフォンのカメラ向けが最も割合が大きく、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などへの影響が懸念される。また、大分と長崎の工場で一部稼働停止していた生産ラインは、生産を再開した。

 ルネサスエレクトロニクスはエンジン制御などを行う自動車用のマイコンなどを手がけている、ルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング(茨城県ひたちなか市)の川尻工場(熊本市南区)で、震災発生から現在も稼働を停止している。

 17日には設備の部品に一部破損があることが判明。被害の拡大が確認された。18日は川尻工場内のクリーンルームの安全が確認でき、調査を始めた。現在、具体的な設備の状況を確認中だ。設備全体の確認ができ次第、生産再開の見通しを立てる予定だ。

 三菱電機は熊本県内にパワー半導体を手がける工場(熊本県合志市)と、TFT(薄膜トランジスタ)液晶モジュールを手がける工場(菊池市)を抱える。建物の倒壊などはないが、どちらも生産を止め可能な限りの確認作業を始めた。

 東芝のシステムLSI事業子会社、ジャパンセミコンダクター(岩手県北上市)の大分工場(大分市)では、生産への影響は出ていない。

 東京エレクトロンは東京エレクトロン九州(熊本県合志市)の合志事業所(同)と大津事業所(熊本県大津町)で、建物の点検を開始した。調査には数日を要し、今週は操業を見合わせる。25日以降の稼働再開は設備状況に応じて判断する。

 各社は被害状況の把握に向け必死の対応を取っている。しかし周辺地域には部材のサプライヤーも多く、その被災状況も調査中で明らかにはなっていない。また交通網の寸断で他地域からの調達が困難になる事態も想定され、生産再開の見通しを立てるには時間がかかりそうだ。
日刊工業新聞2016年4月19日 電機・電子部品
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
余震が落ち着いたところで各社は、工場内部の生産設備やラインに異常がないかの点検・調査を本格化する見通しです。半導体製造は非常に繊細で、装置の機構などが少しズレただけでも良品生産に支障が出ます。それだけに工場内部に大きな被害がなくても、生産再開までにある程度時間がかかる事態も想定されます。東日本大震災で大きな被害を受けたルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)は、生産再開まで約3カ月かかりました。今回はそこまで影響は大きくないように思われますが、注意深く状況を見守っていく必要があります。

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