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群雄割拠のオンライン英会話。注目3社、それぞれの強みとは?

DMM.com、レアジョブ、キュウ急便で生き残るのはどこだ
群雄割拠のオンライン英会話。注目3社、それぞれの強みとは?

DMMは講師を倍増

 国内ではオンライン英会話サービスが人気を集めている。その中でもDMM.com、レアジョブ、キュウ急便の3社が講師を増やすなどして勢いを増している。

 レアジョブとキュウ急便は現地採用したフィリピン人講師を増員、DMM.comはフィリピンやセルビアなど非英語圏だけでなく、カナダや米国などネーティブの講師も採用する。今後淘汰が進むとみられるオンライン英会話市場で生き残るのはどこなのか-。各社の戦略を探った。

DMM.com、ネーティブ講師も採用へ


 DMM.com(東京都渋谷区、松栄立也社長、03・5789・7031)は、オンライン英会話サービス「DMM英会話」の講師数を2018年度に現状の2倍の8200人に増やす。フィリピンやセルビアなど非英語圏だけでなく、カナダや米国などネーティブの講師も採用。講師のバリエーションを増やし教育の質を高める。受講者は、より実践的な語学を学べる。

 今後、スペインやイタリア、タイ、ベトナムなど海外で同サービスの展開を加速し、18年度に国内外のユーザー比率を同等にしたい考え。DMMはオンライン英会話の事業規模やユーザー数を明らかにしていないが18年度にユーザー数も現状の2倍に引き上げる計画。

 このほど、ネーティブスピーカーの講師約300人を採用し「ネーティブコース」を新設した。価格は一般講師の約3倍。通常の講師と組み合わせれば、受講者はより実践的でバリエーション豊かな教育を受けられる。

 また、受講者数人が集まって成果を発表したり勉強の方法を学び合ったりする場も提供し始めた。オンラインだけではできない教育プログラムも提供して差別化していく。

 オンライン英会話はインターネット電話サービス「スカイプ」を介し、海外の講師とマンツーマンで英会話をして語学力を高める教育システム。DMMは13年に後発でオンライン英会話サービスを開始、15年には講師数などで国内最大手になった。他社はフィリピンの講師が中心だが、DMMは60カ国の講師を採用し時差を利用して24時間対応できること、話題の豊富さで飽きがこないことなどの点で差別化している。

キュウ急便、講師を6割増員で「小中高」取り込み


 キュウ急便(東京都杉並区)は、オンライン英会話教育サービスとフィリピン・セブ島で英会話学校の運営を行う「QQイングリッシュ」事業について、現在の約10億円の売り上げを2017年9月期に18億円に引き上げる。事業拡大のために講師を現在の750人から、9月末に1200人に6割増員する。今後、小・中・高校への採用増を目指す。

 大学入試英語へスピーキング試験の導入が検討されていることから、高校生以下の英語教育の需要が高まると判断した。16年度から私立の大妻中野中学校・高校(東京都中野区)で正規授業として採用される予定で、その他に約30校へ導入実績がある。また、企業の福利厚生や研修として、今までに200―300社に導入されている。

 同社はバイク便と輸入スクーター販売を行う傍ら、09年に英会話事業に参入した。15年度には英会話事業の売り上げがバイク事業を超えた。フィリピン人教師たちに英語教師の国際資格「TESOL」の取得を義務づけており、質の高いレッスンを行うことができるのが特徴。また、教師全員を正社員として採用し、モチベーションを高めているという。

 藤岡社長は「日本が英語を話せない人の多い国だからこそ強みがある。世界に英語教育の革命を起こしたい」としている。

レアジョブ「日本人1000万人が英語を話せるように」


 レアジョブは現地採用したフィリピン人講師と日本の生徒を無料通話サービスで結び、低価格で提供するマンツーマン・オンライン英会話レッスンが事業の柱。設立は2007年と新しいが、14年6月に東証マザーズ上場。2月15日には通信教育大手のZ会を傘下に持つ増進会出版社(静岡県長泉町)と業務提携を結び、飛躍を期す。中村岳社長は「地方自治体との連携も増やしたい」と、法人や行政機関の分野のテコ入れも図る。中村社長に今後の戦略を聞いた。

 ―Z会と提携した狙いは。
 「小学校の英語必修化や20年の大学入試改革に向けて、聞く、話す、読む、書くという英語4技能の向上が求められている。特に話すことを強化し『日本人1000万人を英語が話せるようにする』という当社のミッションを加速するため、Z会と組む」

 「私自身、Z会のOBでサービスの良さは知っていた。Z会グループや学校・塾・予備校向けにオンライン英会話レッスンを共同販売し、新たな英語教育サービスを共同開発する。提携の実効性を高めるため、Z会が当社株式の4・33%を取得する予定だ」

 ―フィリピン人を講師に活用する理由は。
 「フィリピン最高峰であるフィリピン大学の学生と卒業生を採用しているが、それでも人件費が安い。英語が公用語の一つで、語学レベルは世界1位の実力。人を育成する際のコミュニケーション能力も非常に高い。日本との時差は1時間で、生活時間がほぼ同じ。日本人が学ぶ際の好条件がそろっている」

 ―安定需要が見込める法人分野の深掘りが成長に欠かせません。
 「一般向けに続き、09年に法人向けサービスを開始し、現在40万人以上のユーザーと670社以上の企業に提供している。15年6月には佐賀県上峰町の小学6年生向けにマンツーマン授業を導入しており、自治体との連携も増やしていきたい」

 ―グローバル人材の育成と語学教育は不可分です。
 「日本には優れた技術がたくさんある。英語力がネックとなっている有能な技術者に対し、アウトプットの場を提供して、語学力を向上させれば、世界で戦える人材が増える。海外進出を考える人が1人でも増えてほしい」
日刊工業新聞2016年3月4日/11日/4月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
オンライン英会話では、人気講師はなかなか予約がとれないとか。今後は優秀な講師をいかに確保できるかが、勝負の分かれ目になりそうです。

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