キリン・ユニチャーム・ロッテ…「プラ汚染防止」共通規制で声明、公平な競争環境求む
プラスチック廃棄物汚染を防ぐ条約案を決定する第5回政府間交渉委員会(INC5)が25日、韓国・釜山で始まる。キリンホールディングス(HD)など10社は、法的拘束力のある条約制定を求める声明を公表した。世界共通の規制があると、資源循環に積極的な企業の努力が報われるためだ。だが、企業からの声は届かず、詳細なルールの決定は持ち越しとなる可能性がある。(編集委員・松木喬)
キリンHDのほか、ユニ・チャーム、ロッテなどが参加する「国際プラスチック条約企業連合」が声明を出し、環境省幹部に手渡した。法的拘束力の内容として「問題のある回避可能なプラスチック製品、懸念のある化学物質を規制または段階的な廃止」「回収、リユース(再利用)、リサイクルの目標とシステムを導入・前進させる国レベルの義務」を要請した。
新たな規制は事業の制約になるため、消極的になる企業が少なくない。企業連合の事務局を務める非政府組織(NGO)、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの三沢行弘マネージャーは「対策を進める企業が公正な環境で戦えるようになる」と規制の効果を話す。
再生材の利用を企業の自主性に任せたままでは、取り組む企業は高コストとなり、不熱心な企業との競争で不利になる。再生材の使用を義務付ければ公平になり、先行する企業ほど優位になる。キリンHDCSV戦略部の池庭愛氏は「各国でバラバラだと、それぞれの規制に合わせるためコストがかかる」とし、世界で共通の規制を求めた。
条約案をめぐっては、1次プラスチックポリマー(新しいプラスチック材料)の生産削減を求める意見が出ている。企業には厳しいが、ペットボトルのリサイクルを例に「私たちのビジネスが縮小するとは思っていない。国際的なルールができると世界各地で再生材を入手しやすくなる」(池庭氏)と期待する。
また、企業連合の代表であるテラサイクルジャパン(横浜市中区)のエリック・カワバタ代表は「規制があるとリユースマーケットが成長する」とする。その好例が、使用済み容器を回収して洗浄し、メーカーに戻すシステム「LooP」。同社は日本でLooPを提供するが、フランスではすでに日本の約2倍の200店舗以上が採用している。一部の使い捨て容器が禁止されたことで、商品数が2023年の2倍を超える110点以上に急速に増えた。
企業連合はプラスチックによる汚染防止を目指す国会議員連盟にも、条約制定の必要性を訴えた。
INC5は12月1日まで。プラスチックの生産制限が最大の争点だ。欧州連合(EU)や島しょ国、アフリカは生産削減を主張し、中国や産油国、ロシアは反対する。条約案の決定を優先するため、生産規制の議論を先送りする公算が大きくなっている。